国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院工学研究科の村山 恵司 助教、沖田 ひかり 博士前期課程学生、浅沼 浩之 教授らの研究グループは、人工的な核酸を酵素を用いずに配列复製する新たな手法の構築に成功しました。
現在地球に存在する生命は、DNA、RNA、タンパク質といった多様な生体分子が関与する複雑なシステムを利用しながら活動しています。一方、原始地球においてはRNAだけで自己複製や機能発現を実現するRNA worldが存在し、更にその前にはRNAより単純な構造の“原始核酸:XNA”が存在していたというPre-RNA world仮説が提唱されています。しかし、“原始核酸”として相応しいXNAは未だ見つかっておらず、Pre-RNA world仮説は広くは受け入れられていませんでした。我々はこれまでに“原始核酸”の候補としてL-aTNA(acyclic L-threoninol nucleic acid)を報告しています。今回の研究では、有機小分子と金属イオンだけを用いて、L-aTNAをあたかも酵素反応のように配列复製できることを見出しました。この結果は、原始地球ではL-aTNAが“原始核酸”として存在していたという可能性を示唆しており、Pre-RNA world仮説を支持する結果です。更に、この配列复製技術を拡張することで、有用なL-aTNA配列をスクリーニングすることが可能となりますので、特定の分子にのみ選択的に作用する新たな核酸医薬や核酸ツール開発への応用が期待できます。
この研究成果は、2021年2月5日付 英国科学雑誌Nature Communicationsオンライン版に掲載されました。
本研究は、础惭贰顿『先端的バイオ创薬等基盘技术开発事业』、基盘研究础、若手研究、公益财団法人立松财団の助成を受けたものです。
?人工核酸尝-补罢狈础の断片を非酵素的に连结し、鋳型配列に相补的な尝-补罢狈础配列を选択的に合成する复製反応に成功した。
?Pre-RNA worldの存在を支持し、L-aTNAが“原始核酸”の候補であることが明らかとなった。
?尝-补罢狈础を遗伝情报とする人工生命の开発や尝-补罢狈础ベースの核酸医薬や核酸ツール开発への応用が期待される。
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セントラルドグマ: 遺伝情報はDNAからRNA、RNAからタンパク質へと一方向に流れるという概念。
XNA(人工核酸): DNA、RNAの天然核酸を構成するリン酸、糖、核酸塩基のうち、リン酸あるいは糖部分の骨格が天然とは異なる化学構造をもつ人工的な核酸分子。核酸分解酵素に対する耐性を持つことから、核酸医薬の候補として近年盛んに研究されている。
L-aTNA: 主鎖骨格にアミノ酸L-threonineの類似構造を持つ人工核酸。相補的なL-aTNAと極めて強く二重鎖形成し、DNAやRNAとも結合し二重鎖を形成できる。
雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Nonenzymatic polymerase-like template-directed synthesis of acyclic L-threoninol nucleic acid
著者:Keiji Murayama*(名大院工), Hikari Okita(名大院工), Takumi Kuriki(名大院工), and Hiroyuki Asanuma*(名大院工)
DOI: