国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院医学系研究科?腫瘍生物学分野の近藤 豊(こんどうゆたか)教授、田﨑 慶彦(たさきよしひこ)大学院生(筆頭著者)らの研究グループは、名古屋市立大学、東京大学、ナノ医療イノベーションセンター、がん研究会との共同研究により、タンパク質に翻訳されない RNA(長鎖非翻訳 RNA*1)のうち TUG1*2を標的とした治療薬が膵臓がんに対して有効である可能性を発見しました。膵臓がんは、がんの中で最も予後不良ながんであり、また抗がん剤に対してがん細胞が耐性を獲得し、薬が効かなくなってしまうことが大きな問題となっています。本研究では、抗がん剤に対する耐性獲得メカニズムの解明と、膵臓がん細胞を狙って効果を発揮する治療薬の開発を試みました。まず膵臓がん細胞で高い発現を示す一方で正常な膵臓細胞では発現しない、長鎖非翻訳 RNA のひとつ TUG1 に注目しました。TUG1 は、膵臓がんの治療薬として用いられる抗がん剤 5-Fluorouracil (5-FU)の分解を促進する働きを発揮し 5-FU の効果を減弱することで耐性獲得に重要な役割を担うことを発見しました。がん細胞を狙って治療薬を効率的に送り届ける“運び屋”と、TUG1 の機能を効率的に抑えることができる薬剤を組み合わせた核酸治療薬(TUG1-DDS)は、膵臓がん細胞を移植したマウスにおいて、膵臓がん細胞特異的に 5-FU の効果を増強することを見出しました。現在 TUG1-DDS は臨床応用に向けての開発を進めています。
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)研究開発課題名「がん細胞の分化制御に関わるエピゲノムを標的とした革新的治療法の開発」の支援及び P-CREATE 技術支援班のサポートのもとでおこなわれたもので、米科学誌「Cancer Research」(2021 年 3 月 1 日付(米国東部時間))に掲載されました。
○ 膵臓がんは、がんの中で最も予後不良ながんとされています。膵臓がんに有効な抗がん剤は限られており、治療薬の開発が急がれています。
○ 膵臓がん患者に対する抗がん剤を用いた薬物治療は、抗がん剤に対してがん細胞が耐性を獲得することや、抗がん剤が体の中の正常細胞にも毒性を示してしまうといったことが問題となっています。
○ 本研究グループは膵臓がん細胞で高い発現を示す一方で正常な膵臓細胞では発現しない、長鎖非翻訳 RNA のひとつ TUG1 に注目しました。TUG1 は、膵臓がんの治療薬として用いられる抗がん剤 5-Fluorouracil (5-FU)耐性獲得の重要な因子となっていることを発見しました。
○ がん細胞に治療薬を効率的に送り届ける“運び屋”と、TUG1 の機能を効率的に抑えることができる薬剤を組み合わせた核酸治療薬。(TUG1-DDS)を作製しました。5-FU に耐性を示す膵臓がん細胞を移植したマウスに TUG1-DDS と 5-FU を同時に投与すると、5-FU の効果を増強し膵臓がんの縮小を認めました。
○ TUG1-DDS は膵臓がん細胞特異的に 5-FU の効果を増強するため、5-FU の正常細胞への毒性を抑えつつ、膵臓がんにおいて有効な治療薬となる可能性があります。
◆详细(プレスリリース本文)は
1. 長鎖非翻訳 RNA
細胞を構成するタンパク質は、RNA を翻訳することで作り出されます。しかし RNA の中にはタンパク質に翻訳されない“非翻訳 RNA”が存在し、こうした非翻訳 RNA は様々な機能を持つ可能性が明らかになっています。非翻訳 RNA の中で全長が 200 塩基以上のものを長鎖非翻訳 RNA といい、がんの発生?悪性化や抗がん剤の耐性に関与していることがわかっています。
2. TUG1(Taurine Upregulated Gene 1)
長鎖非翻訳 RNA のひとつ。多くの膵臓がんで発現が上昇しており、がんの発生?悪性化や抗
がん剤の耐性に関与していることがわかっています。
雑誌名:Cancer Research(3 月 1 日午前 10:00 米国東部時間)
論文タイトル:Cancer-specific targeting of taurine upregulated gene 1 enhances the effects of chemotherapy in pancreatic cancer
著者:Yoshihiko Tasaki1,2, Miho Suzuki1, Keisuke Katsushima1, Keiko Shinjo1, Kenta Iijima1, Yoshiteru Murofushi1, Aya Naiki-Ito3, Kazuki Hayashi4, Chenjie Qiu5, Akiko Takahashi6,7, Yoko Tanaka6, Tokuichi Kawaguchi8, Minoru Sugawara8, Tomoya Kataoka2, Mitsuru Naito9, Kanjiro Miyata10, Kazunori Kataoka11,12, Tetsuo Noda13, Wentao Gao5, Hiromi Kataoka4, Satoru Takahashi3, Kazunori Kimura2 and Yutaka Kondo1
所属:
1. Division of Cancer Biology, 黑料网 Graduate School of Medicine, 65 Tsurumai-cho, Showa-ku, Nagoya, Aichi, 466-8550, Japan.
2. Department of Clinical Pharmaceutics, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, 1 Kawasumi, Mizuho-cho, Mizuho-ku, Nagoya, Aichi, 467-8601, Japan.
3. Department of Experimental Pathology and Tumor Biology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, 1 Kawasumi, Mizuho-cho, Mizuho-ku, Nagoya, Aichi, 467-8601, Japan.
4. Department of Gastroenterology and Metabolism, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, 1 Kawasumi, Mizuho-cho, Mizuho-ku, Nagoya, Aichi, 467-8601, Japan.
5. Pancreas Center, The First Affiliated Hospital with Nanjing Medical University, Nanjing, 210029, People’s Republic of China.
6. Project for Cellular Senescence, Cancer Institute, Japanese Foundation for Cancer Research, 3-8-31 Ariake, Koto-ku, Tokyo, 135-8550, Japan.
7. PRESTO, Japan Science and Technology Agency, 4-1-8 Honcho, Kawaguchi, Saitama, 332-0012, Japan.
8. Cancer Precision Medicine Center, Japanese Foundation for Cancer Research, 3-8-31 Ariake, Koto-ku, Tokyo, 135-8550, Japan.
9. Center for Disease Biology and Integrative Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan.
10. Department of Materials Engineering, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan.
11. Innovation Center of NanoMedicine, Kawasaki Institute of Industrial Promotion, 3-25-14 Tonomachi, Kawasaki-ku, Kawasaki 210-0821, Japan.
12. Institute for Future Initiatives, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan.
13. Director's Room, Cancer Institute, Japanese Foundation for Cancer Research, 3-8-31 Ariake, Koto-ku, Tokyo, 135-8550, Japan.
顿翱滨:
English ver.