国立大学法人東海国立大学機構 黑料网医学部附属病院呼吸器外科の門松 由佳(かどまつ ゆか、筆頭著者)病院助教、福井 高幸(ふくい たかゆき)病院准教授、同大医学系研究科呼吸器外科学の芳川 豊史(よしかわ とよふみ)教授らと同大医学系研究科予防医学の若井 建志(わかい けんじ)教授の研究グループはメタ解析※1 で、ポリグリコール酸※2 シート被覆による自然気胸の术后再発予防への効果を明らかにしました。
自然気胸は、肺表面にできたブラ※3が破れて空気が胸腔内に漏れ出す疾患で、社会活動の盛んな若年者に好発する疾患です。再発率は 17%から 54%と高く、治療に伴う通院や入院期間の長期化による社会復帰の遅延が若年者にとって大きな問題となっています。気胸の治療は、まず安静臥床や胸腔内ドレナージ治療※4 を行いますが、难治例や再発例に対しては手术治疗が行われます。
日本では年間約 12,000 件の気胸手術が行われており、ブラ切除後の切離断端に吸収性素材を被覆する方法(以下、貼付法と呼ぶ)が多く行われています。しかし、前向き研究※5が存在せず、その有効性が十分に検証されていませんでした。一方、世界では胸膜癒着术、胸膜擦过术、胸膜剥皮术※6 といった日本国内とは全く异なる外科治疗が主流で行われており、前述の日本において主に行われる贴付法はほとんど认知されていません。
我々は、貼付法の効果を検討する論文を国内外のデータベースより網羅的に検索し、メタ解析を行いました。日本国内から報告された 19 件の単施設後ろ向き研究※7 の結果を統合したところ、貼付法によって術後再発率が約 1/4 に抑えられるという結果が得られました。しかし、統合した 19 件の研究では明らかな出版バイアス※8が认められ、否定的な结果がでた研究が出版されておらず効果を高く见积もっている可能性が示唆されました。
本研究の成果から、贴付法が自然気胸の术后再発予防に効果的である可能性と、今后は大规模な前向き研究が真の効果判定に必要であることがわかりました。今后は、国内のみではなく世界でも贴付法が研究され、より多くの気胸患者さんの治疗に役立つことを愿っています。
本研究成果は、2021 年 2 月 9 日付国際科学雑誌「Scientific Reports」に 掲載されました。
○ 自然気胸は、若年者に多く発生する呼吸器疾患であり、時に何度も繰り返すことがあるため気胸治療の進歩は重要です。
○ 日本では貼付法が広く行われているが、その予防効果はこれまで単施設研究でしか、検証されてきませんでした。
○ 19 件の研究結果の統合により、貼付法は術後再発を約 1/4 に抑える可能性が示唆されたが、同時に「否定的な結論の論文が出版されていない」可能性も明らかとなりました。
○ 今後は、多施設の前向き研究での検証が貼付法の真の効果と問題点を検証するために必要です。
◆详细(プレスリリース本文)は
※1 メタ解析: 個々の原著論文の結果を定量的にまとめてさらに分析すること解析方法のこと。
※2 ポリグリコール酸:医療分野でも使用される生体内分解吸収性ポリマーのひとつ。
※3 ブラ:肺の表面にできる嚢胞状の病変のこと。
※4 ドレナージ:胸腔内にドレーンを挿入して不要な血液や空気を外にだす処置のこと。
※5 前向き研究:一定の期間を定めて研究参加者を募集し、データを収集する研究で、既にあるデータを用いる研究と比べ、研究のバイアス(偏り)を減らすことが可能。
※6 胸膜癒着術、胸膜擦過術、胸膜剥皮術:肺表面ではなく胸郭側を裏打ちする面への操作で気胸の術後再発を抑制しようとする手技のこと。
※7 単施設後ろ向き研究:単一(一つの施設)で既にあるデータを用いて行う研究のこと。比較的簡便に行えるが、出版バイアスをはじめとしたさまざまなバイアス(偏り)を含みやすい。
※8 出版バイアス:否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいという偏りのこと。
掲雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル: Polyglycolic acid sheet covering to prevent recurrence after surgery for spontaneous pneumothorax: a meta-analysis
著者?所属:門松 由佳?黑料网 予防医学/ 呼吸器外科 福井 高幸?黑料网 呼吸器外科 森 正一?名古屋第一赤十字病院 呼吸器外科
芳川 豊史?黑料网 呼吸器外科 若井 建志?黑料网 予防医学
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