国立大学法人東海国立大学機構 黑料网と国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)研究所、大阪大学、愛知医科大学などの研究チームは、血液がんの治療に使用される分子標的薬の抗 CCR4*2モノクローナル抗体(モガムリズマブ)を、固形がん患者さんに対しては规定の投与量より减らし适正化することで、新たな免疫疗法(併用疗法)として治疗の奏効が期待できることを见出しました。
これは、規定の投与量を減らし最適量としたモガムリズマブが、がんに対する免疫応答を抑制することでがん細胞の増殖を助ける制御性 T 細胞(Treg 細胞)*3を選択的に除去しながら、腫瘍縮小をもたらすセントラルメモリーCD8 陽性 T 細胞*4を维持したためと考えられます。
殺細胞性抗がん剤や分子標的薬では、投与量が多いほど腫瘍細胞を縮小する可能性が高いと考えられますが、本研究により抗 CCR4 モノクローナル抗体は、投与量を減らし適正化することで腫瘍を縮小させる効果を発揮できる可能性が明らかになり、今後のがん免疫療法の開発において薬剤投与量の最適化という視点の重要性が示されました。
免疫チェックポイント阻害剤に代表されるがん免疫疗法は、一部の患者さんで着しい治疗効果をもたらす一方、十分な治疗効果を得られない患者さんも多く、近年、がん免疫疗法薬や杀细胞性抗がん剤等との併用疗法などが试みられていますが、併用疗法によっても半数以上は治疗効果が认められず、より効果的な免疫疗法の开発が求められています。
本研究は、国立がん研究センター 研究所 肿疡免疫研究分野 前田優香 ユニット長、西川博嘉分野長(黑料网大学院医学系研究科 微生物?免疫学讲座 分子细胞免疫学 教授併任)と、大阪大学大学院医学系研究科 臨床肿疡免疫学 和田 尚 特任教授(常勤)、愛知医科大学医学部 肿疡免疫寄附講座 上田龍三 教授らの研究チームで実施しました。
研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に日本時間 2021 年 12 月 14 日付けで掲載されました。
● 血液がんで使用される分子标的薬モガムリズマブ*1について、投与量を最适化することで、固形がんに対するがん免疫疗法薬としての治疗効果が得られる可能性が示唆されました。
● 杀细胞性抗がん剤や分子标的薬では、投与量が多いほど、肿疡细胞を缩小する可能性が高いと考えられますが、免疫疗法では投与量を减らし适正化することで肿疡细胞が缩小する効果が得られる可能性が示されました。
● がん免疫疗法での、标的细胞への作用を介した至适投与量を考える上で重要な知见となります。
● 新たな免疫疗法の选択肢となることが期待され、今后、有効性や安全性を评価する临床试験を计画します。
◆详细(プレスリリース本文)は
*1 モガムリズマブ
ヒト化抗 CCR4 モノクローナル抗体。ATLL および末梢性 T 細胞リンパ腫(PTCL)細胞に発現しているCCR4 分子を標的とする分子標的薬として臨床応用され、保険承認されている。
*2 CCR4
CC ケモカイン受容体4。白血球、主に T 細胞の表面に発現しているタンパク質で、免疫細胞の浸潤に関わる。成人 T 細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などの造血器腫瘍の一部に高発現しているため、分子標的治療の標的となっている。
*3 制御性 T 細胞 (Regulatory T cell: Treg 細胞)
免疫応答を抑制する細胞。自己免疫疾患やアレルギーなどを引き起こす過剰な免疫応答を抑制するが、がん免疫においては、がんを攻撃するエフェクターT 細胞などの抗肿疡免疫応答を抑制してしまう。
*4 セントラルメモリーCD8 陽性 T 細胞
すでに抗原に暴露され、二次リンパ節に存在するリンパ球。抗原刺激により即座に活性化されると細胞傷害性 T 細胞などのエフェクターT 細胞になり二次免疫応答の中心的な役割を果たす。免疫チェックポイント阻害剤や免疫細胞療法(CAR-T 細胞療法)などのがん免疫療法で抗肿疡免疫応答を担うことが近年明らかとなってきている。
雑誌名: Nature Communications
タイトル: Depletion of central memory CD8+T cells might impede the antitumor therapeutic effect of Mogamulizumab
著者: Yuka Maeda, Hisashi Wada, Daisuke Sugiyama, Takuro Saito, Takumi Irie, Kota Itahashi, Kodai Minoura, Susumu Suzuki, Takashi Kojima, Kazuhiro Kakimi, Jun Nakajima, Takeru Funakoshi, Shinsuke Iida, Mikio Oka, Teppai Shimamura, Toshihiko Doi, Yuichiro Doki, Eiichi Nakayama, Ryuzo Ueda and Hiroyoshi Nishikawa
DOI: 10.1038/s41467-021-27574-0
鲍搁尝:
掲載日: 2021 年 12 月 14 日
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