国立大学法人東海国立大学機構 黑料网理学研究科の野口 巧 教授、嶋田 友一郎 特任助教(研究当時)、長尾 遼 特任助教(研究当時)、北島(井原) 智美 研究員、松原 巧 博士前期課程学生の研究グループは、理化学研究所環境資源科学研究センターの堂前 直 ユニットリーダーおよび鈴木 健裕 専任技師との共同研究により、光合成酸素発生酵素である光化学系Ⅱのアミノ酸変换が、太古の地球における酸素発生の起源となったという新たな仮説を提唱しました。
光合成による酸素発生は、植物やシアノバクテリア注2)の光化学系Ⅱタンパク质中の酸素発生系注3)において、光エネルギーによる水の分解として行われます。酸素発生系を构成するアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸)を遗伝子レベルで别のアミノ酸に改変すると、それらのアミノ酸はタンパク质合成后に本来のアミノ酸に変换され、酸素発生が回復する现象を见出しました。
このタンパク質レベルでのアミノ酸変换によって、祖先型光化学系Ⅱにおいて最初の酸素発生系が形成され、太古の地球において光合成による酸素発生が始まったと推測されます。
本研究成果は、2022年7月21日付イギリス科学雑誌「Nature Communications」オンライン版で掲載されました。
?太古に地球において光合成による酸素発生がいつ、どのように始まったのかは地球生命史における大きな谜である。
?酸素発生酵素である光化学系Ⅱ注1)において触媒部位を构成するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を遗伝子レベルで他のアミノ酸に改変すると、タンパク质合成后に本来のアミノ酸に変换され、酸素発生能を回復する。
?祖先型光化学系Ⅱおけるアミノ酸変换が、太古の地球の光合成酸素発生の起源となった可能性がある。
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注1)光化学系Ⅱ:
光合成電子伝達鎖の酸化側末端に位置するタンパク質複合体であり、光エネルギーを用いて水分子から電子を引き抜き、プラストキノンを還元してプラストキノールを生成する機能を持つ。D1, D2, CP43, CP47タンパク質など20以上のタンパク質サブユニットからなる。光化学系Ⅰとともに、光合成による光エネルギー変換の中心的役割を担う。
注2)シアノバクテリア:
酸素発生型光合成を行う原核生物。藻类や植物が持つ叶緑体の祖先であると考えられている。
注3)酸素発生系
光化学系Ⅱにおける水分解?酸素発生反応の触媒部位。マンガンクラスターとその配位子(D1-D170, D1-E189, D1-H332, D1-E333, D1-D342, D1-A344(C端), CP43-E354, 4つの水分子)、および近傍アミノ酸よりなる。S0状態からS4状態までの5つの中間状態の光誘起サイクルとして、水分子を酸素とプロトンに分解する。
雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Post-translational amino acid conversion in photosystem II as a possible origin of photosynthetic oxygen evolution
着者:Yuichiro Shimada, Takehiro Suzuki, Takumi Matsubara, Tomomi Kitajima-Ihara, Ryo Nagao, Naoshi Dohmae, Takumi Noguchi (本学関係者に下线)
DOI: 10.1038/s41467-022-31931-y
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