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医歯薬学

2023.01.19

BRCA1 がん抑制遺伝子のハプロ不全は、細胞内の鉄代謝の撹乱とフェロトーシス抵抗性を誘導することにより、クリソタイル(白石绵)曝露後の悪性中皮肿の発生を促進する

国立大学法人東海国立大学機構黑料网大学院医学系研究科(研究科長:木村 宏)生体反応病理学の豊國 伸哉(とよくに しんや)教授、羅 亜光(ろう やぐぁん)大学院生の研究グループは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の今岡 達彦(いまおか たつひこ)博士による研究グループとの共同研究により、ヒトの遺伝性乳癌?卵巣癌症候群※1(HBOC; hereditary breast and ovarian cancer syndrome)の原因がん抑制遺伝子BRCA1※2 のハプロ不全※3Brca1L63X/+ラットモデルにおいてクリソタイル※4(白石绵)による腹膜悪性中皮肿※5 の発生を促进することを明らかにしました。
本研究により、BRCA1 生殖細胞変異が、雄のラットにおいてクリソタイルによる中皮肿発生を促進することを発見しました。関連する発がん機構として、ゲノムの不安定性(ゲノム内の欠損領域増加、特にCdkn2a/2b がん抑制遗伝子)、细胞内鉄环境の変化とフェロトーシス抵抗性※6 を诱导することが示唆されています。遗伝性乳癌?卵巣癌症候群の原因がん抑制遗伝子BRCA1 の生殖细胞変异を持つ男性保因者においては、クリソタイルが重要かつ回避可能な発がんリスクの可能性があります。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御に向けた基盤技術の創出」研究領域(研究総括:馬場 嘉信?黑料网教授)における研究課題名「細胞外微粒子への生体応答と発がん?動脈硬化症との関連の解析?(研究代表者:豊國 伸哉?黑料网教授)(JPMJCR19H4)の支援を受けたものです。
本研究成果は科学誌「Cancer Science」(オンライン版)2022 年 12 月 21 日に掲載されました。

 

【ポイント】

○ ラット Brca1L63X/+モデルでは、雄において、クリソタイル(白石绵)投与による中皮肿発症が促進された
Brca1L63X/+のクリソタイル誘発中皮肿では、より長い領域のゲノム欠失が起こり、特にCdkn2a/2b 遗伝子の欠损が高频度に発生した
○ BRCA1 ハプロ不全の状態では、アスベスト曝露後の中皮細胞において、細胞内鉄環境の変化とフェロトーシス抵抗性が促進された

 

◆详细(プレスリリース本文)は

 

【用语説明】

※1 遺伝性乳癌?卵巣癌症候群(HBOC; hereditary breast and ovarian cancer syndrome)
BRCA1 あるいはBRCA2 の生殖细胞系列の异変に起因する乳癌および卵巣癌をはじめとするがんの易罹患性症候群であり、常染色体优性遗伝形式を示す。
※2 BRCA1(マウスやラットでは Brca1 と表記)
BRCA1 タンパク質は、細胞内で DNA に生じた二本鎖切断を修復することに関わっている中心的タンパク質の一つ。L63X/+はBRCA1 遺伝子の片側のアレルにおいて、コドン 63 のロイシンがストップコドンになっている遺伝子型であることを意味する。
※3 ハプロ不全
通常は 1 対 2 本の遺伝子の 1 本が不活性化されるために、この遺伝子由来のタンパク質の量が不十分となり、そのために何らかの病的状態が現れること。
※4 クリソタイル(白石绵)
しなやかな構造をもち、結晶構造には鉄を含有しない石绵。白石绵ともよばれ、過去には吹きつけアスベストとして家屋で多量に使用された。
※5 悪性中皮肿(単に中皮肿ともよばれる)
胸腔や腹腔など、体腔の表面を覆う中皮细胞由来の悪性肿疡である。発症部位の特性から早期诊断は极めて困难。诊断后は、化学疗法、外科疗法、放射线疗法による集学的な治疗がなされているが、标準的なプロトコールはまだ试験的な段阶であり、予后が悪い肿疡として知られている。
※6 フェロトーシス抵抗性
フェロトーシスは 2012 年に新たに提唱された細胞死の概念であり、脂質過酸化を伴う触媒性 Fe(II)依存性に起こる壊死形態の細胞死と定義されている。フェロトーシスは鉄と抗酸化を担う硫黄の相対的比が鉄有意に傾くことで開始される。フェロトーシス抵抗性とは、変異獲得など種々の分子機構により、この細胞死に対して抵抗性が発生していることを指す。

 

【论文情报】

掲載誌:Cancer Science
論 文 タ イ ト ル : BRCA1 haploinsufficiency impairs iron metabolism to promote chrysotile-induced mesothelioma via ferroptosis-resistance
著者?所属:Yaguang Luo1, Shinya Akatsuka1, Yashiro Motooka1, Yingyi Kong1, Hao Zheng1, Tomoji Mashimo2, 3, Tatsuhiko Imaoka4 and Shinya Toyokuni1, 5
1 Department of Pathology and Biological Response, 黑料网 Graduate School of Medicine, 65 Tsurumai-cho, Showa-ku, Nagoya 466-8550, Japan;
2 Division of Animal Genetics, Laboratory Animal Research Center, Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo 108-8639, Japan;
3 Division of Genome Engineering, Center for Experimental Medicine and Systems Biology, Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo 108-8639, Japan;
4 Department of Radiation Effects Research, National Institute of Radiological Sciences, National Institutes for Quantum Science and Technology, 4-9-1, Anagawa, Inage-ku, Chiba 263-8555, Japan;
5 Center for Low-temperature Plasma Sciences, 黑料网, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8603, Japan

 

顿翱滨:

 

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【研究代表者】