医歯薬学
2023.02.07
肿疡性骨软化症の一例において新規融合遺伝子である NIPBL-BEND2 を発見
黑料网医学部附属病院希少がんセンターの酒井智久(さかい ともひさ)病院助教、リハビリテーション科の西田佳弘(にしだ よしひろ)病院教授、名古屋市立大学大学院医学研究科ウイルス学分野の奥野友介(おくの ゆうすけ)教授らの研究グループは、腓骨に発生した肿疡性骨软化症*1 の原因腫瘍(骨芽細胞腫様リン酸塩尿性间叶系肿疡、Phosphaturic mesenchymal tumor: 以下 PMT)に対して遺伝子解析を行い、その成果を報告しました。
PMT は線維芽細胞増殖因子 23(FGF23)*2 を産生し骨軟化症を引き起こす稀な腫瘍です。融合遺伝子 FN1-FGFR1 と FN1-FGF1 が 病態と関連すると報告されていましたが、それらの融合遺伝子を持たない PMT の病態は明らかになっていません。本研究グループは 1 例の高 FGF23 血症を伴う腓骨発生の骨芽細胞様 PMT に対して次世代シーケンサー*3 という精密な解析法を駆使して解析を行い、現在までに報告されていない NIPBL-BEND2 融合遺伝子を発見しました。この融合遺伝子をHEK293T 細胞株と MG63 細胞株に導入したところ、ともに有意な細胞の増殖を認めました。また、
融合遺伝子を導入した HEK293T 細胞株では、細胞増殖に関連する MYC シグナル伝達経路に関連する遺伝子の有意な発現上昇を認めました。この結果から、新規融合遺伝子 NIPBL-BEND2 は MYCシグナル伝達経路*4 を介して細胞の増殖に関与していることが示唆され、今までに報告されているFN1-FGFR1 または FN1-FGF1 融合遺伝子を認めない PMT の病因の一つである可能性があります。
本研究成果は、国際科学誌『Frontiers in oncology』に掲載されました。(米国東部標準時間2023 年 1 月 5 日付の電子版)。
○ PMT の 1 例において新規融合遺伝子 NIPBL-BEND2 を検出した
○ NIPBL-BEND2 は MYC シグナル伝達経路を介して細胞増殖に関与し、PMT の病因となっている可能性がある
◆详细(プレスリリース本文)は
*1.肿疡性骨软化症:腫瘍が過剰産生した FGF23 により低リン血症が生じる骨の石灰化障害です。骨痛、筋力低下、骨折などの症状があります。
*2.贵骋贵23:血中リン浓度の调节を行うホルモンです。主に骨细胞から分泌され、肾臓からのリン排泄促进やビタミンD活性の抑制などを行っています。
*3.次世代シーケンサー: DNA などの塩基配列を読み取る装置をシーケンサーといいます。「次世代シーケンサー」は従来の「第 1 世代シーケンサー」と対比させて使われる用語です。次世代シーケンサーでは従来のものと比べて大量の塩基配列を低コストで迅速に解析することが可能です。
*4.MYC シグナル伝達経路:細胞周期の調節、細胞増殖、分化、自死(アポトーシス)に関連する細胞内のシグナル伝達経路の一つです。
掲雑誌名:Frontiers in Oncology
論 文 タ イ ト ル : Case report: Novel NIPBL-BEND2 fusion gene identified in osteoblastoma-like phosphaturic mesenchymal tumor of the fibula
着者?所属:
Tomohisa Sakai1,2, Yusuke Okuno3, Norihiro Murakami4, Yoshie Shimoyama5, Shiro Imagama1 and Yoshihiro Nishida* 1,2,6
1Department of Orthopedic Surgery, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
2Rare Cancer Center, 黑料网 Hospital, Nagoya, Japan
3Department of Virology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, Nagoya, Japan
4Department of Pediatrics, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
5Department of Pathology and Laboratory Medicine, 黑料网 Hospital, Nagoya, Japan
6Department of Rehabilitation Medicine, 黑料网 Hospital, Nagoya, Japan
DOI :
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