国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院工学研究科の石原 一彰 教授、大村 修平 助教、堀部 貴大 特任助教(研究当時)、片桐 佳 博士後期課程学生、加藤 春奈 博士前期課程学生(研究当時)らの研究グループは、北海道大学触媒科学研究所の長谷川 淳也 教授、宮川 翔 博士後期課程学生との共同研究で、キラル鉄(Ⅲ)光レドックス触媒を用いる不斉ラジカルカチオン[2 + 2]及び[4 + 2]环化付加反応の開発に成功しました。具体的には、不斉ラジカルカチオン[2 + 2]环化付加反応の開発により、エナンチオ選択性注7)とジアステレオ选択性注8)の同時制御を達成し、不斉ラジカルカチオン[4 + 2]环化付加反応の開発により、古典的な[4 + 2]环化付加反応(Diels-Alder反応注9))では得ることの難しい[4 + 2]環化付加体の位置異性体注10)の合成を达成しました。
多くの医薬品に见られる4及び6员环骨格の中でも、従来法では达成困难な骨格构筑が可能になり、本研究により医薬品探索研究の推进が期待されます。さらに、青色の可视光照射下、触媒には地球上に普遍的に存在する豊富な资源である鉄を用いることから、本研究は厂顿骋蝉と元素戦略に基づく新たな手法の开拓といえます。
本研究成果は、2023年7月5日付アメリカ化学会誌「J. Am. Chem. Soc.」のオンライン版に掲載されました。
?豊富な资源である鉄の特性を活かしてキラル注1)鉄(滨滨滨)光レドックス触媒注2)を開発(SDGs 9,12注3)); 元素戦略)
?青色の可視光をエネルギーに用いた化学反応を開発(SDGs 7,9)
?不斉注4)ラジカルカチオン注5)[2 + 2]および[4 + 2]环化付加反応注6)を開発(SDGs 9)
?得られた[2 + 2]環化付加体および[4 + 2]環化付加体は、多くの医薬品に見られる重要な骨格を有しており、医薬品探索研究の推進を期待(SDGs 3,9,12)
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注1)キラル:
镜像と重ね合わすことができない関係。
注2)光レドックス触媒:
光エネルギーを吸収して优れた酸化力または还元力を示す触媒。
注3)厂顿骋蝉:
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)。2030年までに達成すべき具体的な17の目標が示されている。
注4)不斉:
分子などが立体构造に対称性を欠く现象。
注5)ラジカルカチオン:
ラジカルとカチオンの両方の性质を有する化学种。
注6)环化付加反応:
一般に、多重结合同士が付加反応を起こして环を形成する化学反応。
注7)エナンチオ选択性:
エナンチオマー(镜像异性体)の生成比。
注8)ジアステレオ选択性:
ジアステレオマー(エナンチオマーに该当しない立体异性体)の生成比。
注9)顿颈别濒蝉-础濒诲别谤反応:
アルケンとジエンの环化付加反応。1928年にOtto DielsとKurt Alderによって発見された。
注10)位置异性体:
谤别驳颈辞颈蝉辞尘别谤の日本语訳。化学反応の配向の违いによって生じる异性体。その生成比を位置选択性(谤别驳颈辞颈蝉别濒别肠迟颈惫颈迟测)という。蝉颈迟别-蝉别濒别肠迟颈惫颈迟测(一つの基质に同种の官能基が复数存在する际の官能基选択性)も位置选択性を訳されるが、区别して用いられる。
雑誌名:米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)
論文タイトル:Highly Enantioselective Radical Cation [2 + 2] and [4 + 2] Cycloadditions by Chiral Iron(III) Photoredox Catalysis
著者:大村 修平(名大助教)、片桐 佳(名大院生)、加藤 春奈(当時、名大院生)、堀部 貴大(当時、名大特任助教)、宮川 翔(北大院生)、長谷川 淳也(北大教授)、石原 一彰(名大教授)
DOI: 10.1021/jacs.3c04010
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