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医歯薬学

2023.08.21

统合失调症の新規治療薬の開発に朗報: Rho キナーゼ阻害薬によるドーパミン仮説モデルマウスの認知機能障害の改善を新たに解明

国立大学法人東海国立大学機構黑料网大学院医学系研究科医疗薬学の Liao Jingzhu 大学院生(現 米国?カルフォルニア大学リバーサイド校 博士研究員)、溝口博之 准教授、山田清文 教授、同大医学系研究科精神疾患病態解明学の尾崎紀夫 特任教授らの研究グループは、Rho キナーゼ(ROCK)阻害剤であるファスジルが统合失调症のドーパミン仮説に基づく薬理学的统合失调症モデルマウス※7 の认知机能障害を改善することを明らかにしました。

 

これまでに同研究グループは、日本人统合失调症患者対象のゲノム解析により、発症に強く関与する ARHGAP10 遺伝子バリアントを同定しました(Sekiguchi M et al., Transl Psychiatry, 2020) 。 さらに、このリスクバリアントを模した Arhgap10 遗伝子改変マウスを作出し、Arhgap10 遺伝子バリアントにより引き起こされる统合失调症の病態に ROCK が関与している可能性を明らかし、ARHGAP10 遺伝子バリアントをもつ患者に対する治療薬として ROCK 阻害薬が有望であることを示しました(Tanaka R et al., Pharmacol Res, 2023)。しかし、ARHGAP10 遺伝子バリアントをもつ患者は極めて稀であり、同遺伝子を含む低分子量 G タンパク質関连遗伝子バリアントを有する患者のみならず、広く统合失调症患者に対して ROCK 阻害薬が有効かどうか明らかにする必要がありました。

 

本研究では、ファスジルが Arhgap10 遺伝子バリアントを持たない薬理学的统合失调症モデルであるメタンフェタミン処置マウスの认知机能障害を改善することを明らかにしました。さらに、メタンフェタミン処置により内側前頭前皮質や背内側線条体などの脳領域において ROCK が異常に活性化することで認知機能障害が誘発されることを示しました。この結果は、ARHGAP10 遺伝子を含む低分子量 G タンパク質シグナル関連遺伝子の異常の有無に関わらず、ROCK が统合失调症の新規治療標的となる可能性を示唆するものであり、ROCK 阻害薬は治療困難な認知機能障害に対して有効であると思われます。

 

本研究成果は「Pharmacological Research」2023 年 8 月号に掲載されました。

 

【ポイント】

?统合失调症のドーパミン仮説に基づくメタンフェタミン※1 処置マウスの認知機能障害に対して、Rho キナーゼ(ROCK)※2 阻害薬であるファスジルが改善効果を示すことを明らかにした。
?统合失调症に大きく関わる内側前頭前皮質※3 および背内侧线条体※4 などの脳領域において、メタンフェタミンにより ROCK が異常に活性化されることを確認した。
?内側前頭前皮質および背内侧线条体に ROCK 阻害剤を微量注入することでメタンフェタミン処置マウスの認知機能障害を改善することを示した。
?ROCK が ARHGAP10 遺伝子などの低分子量 G タンパク質シグナル※5 関连遗伝子バリアント※6 を有する患者のみならず、広く统合失调症患者に対する新規治療標的となる可能性が示唆された。

 

◆详细(プレスリリース本文)は

 

【用语説明】

※1 メタンフェタミン
主にドーパミン神経系に作用してドーパミン游离量を増やすことで、精神的な兴奋作用を示します。

 

※2 Rho キナーゼ(ROCK)
低分子量 GTP 結合タンパク質の一つである Rho により活性化されるタンパク質リン酸化酵素の一つです。多くのタンパク質のリン酸化に関与し、発生?発達期における神経管形成、神経突起伸長制御、シナプス形成に加え、成体でのシナプス可塑性などに重要な役割を果たしています。

 

※3 内側前頭前皮質
大脳前头叶の前方にある领域で、复雑な认知行动、性格、意思决定、および适切な社会的行动の计画や実行に関与します。

 

※4 背内側線条体
大脳基底核の构成领域の一つで、运动机能、意思决定や弁别学习などに関与します。

 

※5 低分子量 G タンパク質シグナル
分子量 20-30kDa のグアノシン三リン酸(GTP)結合タンパク質です。グアノシン二リン酸(GDP)結合型から GTP 結合型への転換により活性型となり、特異的な標的分子に結合して細胞内シグナルを伝達する分子スイッチとして機能します。

 

※6 バリアント
各个人が持っているゲノムの违い。

 

※7 薬理学的统合失调症モデルマウス
统合失调症の病態仮説としてドーパミン神経系の機能亢進(ドーパミン仮説)やグルタミン酸神経系の機能低下(グルタミン酸仮説)が提唱されており、これらを模倣するために覚醒剤(ドーパミン仮説)やグルタミン酸受容体アンタゴニスト(グルタミン酸仮説)などの薬物を処置して作成した统合失调症の動物モデルです。抗精神病薬の薬効評価に広く用いられてきました。

 

【论文情报】

雑誌名:Pharmacological Research
論文タイトル:Rho kinase inhibitors ameliorate cognitive impairment in a male mouse model of methamphetamine-induced schizophrenia
着者名?所属名:
Jingzhu Liaoa, Geyao Donga, Wenjun Zhua, Bolati Wulaera, Hiroyuki Mizoguchia, Masahito Sawahataa, Yue Liua, Kozo Kaibuchic, Norio Ozakid, Toshitaka Nabeshimae,f, Taku Nagaia,b, Kiyofumi Yamadaa,f,*
aDepartment of Neuropsychopharmacology and Hospital Pharmacy, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya 466-8550, Japan
bDivision of Behavioral Neuropharmacology, International Center for Brain Science (ICBS), Fujita Health University, Toyoake 470-1192, Japan
cInstitute for Comprehensive Medical Science, Fujita Health University, Toyoake, Aichi 470-1129, Japan
dDepartment of Psychiatry, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya 466–8560, Japan
eLaboratory of Health and Medical Science Innovation, Fujita Health University Graduate School of Health Sciences, Toyoake 470-1192, Japan
fJapanese Drug Organization of Appropriate Use and Research, Nagoya, Aichi, Japan
DOI:

 

English ver.

 

【研究代表者】