化学
2024.01.18
非対称な二次元シートを利用したナノサイズの巻物構造の実現 ~高性能な触媒や発電デバイスへの応用に期待~
東京都立大学、産業技術総合研究所、筑波大学、東北大学、黑料网、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学らの研究チーム(構成員及びその所属は以下「研究チーム構成員」のとおり)は、次世代の半導体材料として注目されている迁移金属ダイカルコゲナイド(TMD)(注1)の単層シートを利用し、最小内径5 nm程度のナノサイズの巻物(スクロール)状構造の作製に成功しました。TMDは遷移金属原子がカルコゲン原子に挟まれた3原子厚のシート状物質であり、その機能や応用が近年注目を集めています。一般に、TMDは平坦な構造が安定であり、円筒などの曲がった構造は不安定な状態となります。本研究では、上部と下部のカルコゲン原子の種類を変えたヤヌス構造と呼ばれるTMDを作製し、この非対称な構造がスクロール化を促進することを見出しました。理論計算との比較より、最小内径が5 nm程度まで安定な構造となることを確認しました。また、スクロール構造に由来して軸に平行な偏光を持つ光を照射したときに発光や光散乱の強度が増大すること、表面の電気的な特性がセレン側と硫黄側で異なること、及びスクロール構造が水素発生特性を有するなどの基礎的性質を明らかにしました。
今回得られた研究成果は、平坦な二次元シート材料を円筒状の巻物构造に変形する新たな手法を提案するものであり、ナノ构造と物性の相関関係の解明、そして罢惭顿の触媒特性や光电変换特性などの机能の高性能化に向けた基盘技术となることが期待されます。
本研究成果は、2024年1月17日(米国東部時間)付けでアメリカ化学会が発行する英文誌『ACS Nano』にて発表されました。
?迁移金属ダイカルコゲナイド(TMD)のシートを安定した構造で巻物(スクロール)にする新たな手法を開発。
?罢惭顿の上部と下部の组成を変えた「ヤヌス构造」が、スクロール化を促进することを発见。
?罢惭顿の曲率や结晶の対称性などの制御を通じた触媒や光电変换机能の高性能化が期待。
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(注1)迁移金属ダイカルコゲナイド(TMD)
タングステンやモリブデンなどの迁移金属原子と、硫黄やセレンなどのカルコゲン原子で构成される层状物质。迁移金属とカルコゲンが1:2の比率で含まれ、组成は惭齿2と表される。単层は図1补のように迁移金属とカルコゲン原子が共有结合で结ばれ、3原子厚のシート构造を持つ。近年、罢惭顿が持つ优れた半导体特性により大きな注目を集めている。
(タイトル)Nanoscrolls of Janus Monolayer Transition Metal Dichalcogenides
(著者名)Masahiko Kaneda, Wenjin Zhang, Zheng Liu, Yanlin Gao, Mina Maruyama, Yusuke Nakanishi, Hiroshi Nakajo, Soma Aoki, Kota Honda, Tomoya Ogawa, Kazuki Hashimoto, Takahiko Endo, Kohei Aso, Tongmin Chen, Yoshifumi Oshima, Yukiko Yamada-Takamura, Yasufumi Takahashi, Susumu Okada, Toshiaki Kato*, and Yasumitsu Miyata*
*Corresponding author
(雑誌名)ACS Nano
(顿翱滨)