遠位型ミオパチーの一種である GNE ミオパチーは、体幹から離れた部位から筋肉が萎縮、変性し次第に体の自由が奪われていく希少疾病で、指定難病の一つです。我が国の患者数は 400 名程度と推定され、その多くが 10 代後半から 30 代にかけて発症しています。
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授らのグループは、2010 年から医師主導治験として第Ⅰ相試験、第 II/III 相試験、ノーベルファーマ株式会社が治験依頼者となる有効性確認試験を実施し、GNE ミオパチーを対象としたウルトラオーファンドラッグ(注 4)であるアセノベル®徐放錠 500mg の治療効果を明らかにしました。今回の研究では 48 週の二重盲検期を終えた 19 例の患者に対して、72 週間にわたってアセノベル®徐放錠を継続投与し、安全性と有効性を确认しました。これらの結果をもとにノーベルファーマ株式会社が2024 年 3 月 26 日に正式な製造販売承認を取得しました。今後は製造販売後調査によりリアルワールドでの効果検証が必要で、長期投与での安全性が担保されていることは重要な知見です。
本研究成果は、2024 年 6 月 5 日に Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry 誌にオンラインで掲載されました。
? 東北大学病院は、遠位型ミオパチー(注 1)の一種である縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNE ミオパチー)(注 2)を対象とした治疗薬の临床试験を実施してきました。
? 48 週の二重盲検期を終えた 19 例の患者に対して、72 週間にわたってアセノベル®徐放錠(注 3)を継続投与し、安全性と有効性を确认しました。
? 本研究およびその後の有効性確認試験の結果により、ノーベルファーマ株式会社が 2024 年 3 月に製造販売承認を取得しました。今回の結果によりGNE ミオパチー患者への長期投与の安全性が担保されました。
◆详细(プレスリリース本文)は
注1. 遠位型ミオパチー:遺伝的な筋肉の病気(筋疾患)の一つです。理由は不明ですが、筋疾患の多くは、体幹に近い筋(近位筋)から障害されます。ところがこの遠位型ミオパチーは、体幹から遠い筋(遠位筋)、例えば足首を動かすような筋肉や指先を動かすような筋肉から障害されます。そのような遺伝性筋疾患を総称して、遠位型ミオパチーと呼んでいます。
注2. 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNE ミオパチー):遠位型ミオパチーの一つで 1980 年代の日本からの臨床報告が疾患概念確立の端緒となりました。GNE 遺伝子はシアル酸という糖の一種を身体の中で合成するのに必要な酵素の設計図です。患者はこの酵素の機能が低下していて、シアル酸が出来にくくなっています。
注3. アセノベル®徐放錠 500mg:一般名はアセノイラミン酸で、シアル酸の一種です。GNE ミオパチーで足りなくなったシアル酸を補うため経口投与可能な薬剤として開発されました。
注4. ウルトラオーファンドラッグ:オーファンドラッグは対象患者数が本邦において 5 万人未満、医療上特にその必要性が高いものなどの条件を満たし、厚生労働大臣が指定した医薬品です。対象患者数が 1,000 人未満の疾患は、さらに医薬品の開発が困難であり、ウルトラオーファンドラッグと呼ばれています。
タイトル:Safety and Efficacy of Aceneuramic Acid in GNE Myopathy: Open-Label Extension Study
著者:Suzuki N, Mori-Yoshimura M, Katsuno M, Takahashi MP, Yamashita S, Oya Y, Hashizume A, Yamada S, Nakamori M, Izumi R, Kato M, Warita H, Tateyama M, Kuroda H, Asada R, Yamaguchi T, Nishino I, Aoki M*
(铃木直辉、森まどか、胜野雅央、髙桥正纪、山下贤、大矢寧、桥詰淳、山田晋一郎、中森雅之、井泉瑠美子、加藤昌昭、割田仁、竪山真规、黒田宙、浅田隆太、山口拓洋、西野一叁、青木正志)
*責任著者:東北大学?学院医学系研究科神経内科学分野 教授 青木正志
掲載誌:Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry
DOI: