医歯薬学
2024.06.11
遗伝性骨髄不全症候群に対する新たな診断システムを構築 ~タンパク質発現に基づく「高深度プロテオーム解析」が診断率の向上に寄与~
黑料网大学院医学系研究科 小児科学の高橋 義行 教授、村松 秀城 講師、若松 学 助教、公益財団法人かずさDNA研究所 小原 收 副所長、川島 祐介 応用プロテオミクスグループ長らの研究グループは、遗伝性骨髄不全症候群(Inherited bone marrow failure syndrome;IBMFS)(※1)に対する高深度プロテオーム(※2)解析を行い、シュワッハマン?ダイアモンド症候群(SDS)や ADH5/ALDH2 欠損症に対して、タンパク質発現に基づいた迅速かつ簡便なスクリーニングシステムを構築することに成功しました。
IBMFS は、先天的な遺伝子変異が原因で、正常な血液細胞が造れなくなり、貧血、血小板減少、顆粒球減少を呈する病気です。IBMFS には、SDS、ファンコニ貧血(FA)、ダイアモンド?ブラックファン貧血(DBA)、先天性角化不全症(DC)、ADH5/ALDH2 欠損症などの病気が含まれます。これらの病気は、全身の合併症や発がん素因が関連しているために、正確な診断を行い、適切な治療とフォローアップを受ける必要があります。次世代シーケンサー(※3)による遺伝子解析(Next-generation sequencing; NGS)の導入により、各段に遺伝子診断が容易になりましたが、技術的な問題から正しい診断がなされず、見逃される症例が存在します。このような背景から、NGS による遺伝子解析以外の新しいアプローチによる診断検査法の確立が望まれていました。
プロテオーム解析は、高性能な质量分析装置(※5)を用いて、生物学的サンプルからタンパク質を同定?定量し、網羅的なタンパク質の発現解析を行うことができます。従来のプロテオーム解析では、技術的な限界のために約 3,000 種類のタンパク質の解析しか一度に測定できませんでしたが、最新の質量分析器を用いた高深度プロテオーム解析では、検出が難しいキナーゼや転写因子などの微量なタンパク質も対象に含めたタンパク質の発現解析が可能であり、約 10,000 種類のタンパク質を解析することができます。
本研究では、IBMFS 患者に対してプロテオーム解析を行い、それぞれの病気に特徴的なタンパク質発現プロファイリングを持つ 8 グループに分類しました。特に、SDS 患者とADH5/ALDH2 欠損症患者は、それぞれ SBDS と ADH5 タンパク質の有意な発現低下を認めたため、確定診断に非常に有用でした。次に、調べるタンパク質の数を絞り、簡便かつ迅速な「標的プロテオーム解析」を 400 例以上のサンプルで実施し、IBMFS の診断検査法として臨床応用可能な十分な性能を有することを確認しました。
本研究では、世界で初めて IBMFS に対する高深度プロテオーム解析と NGS 解析を組み合わせた「プロテオゲノム解析」を実施しました。適切なスクリーニング検査が存在しないIBMFS 患者に対して、より正確な診断をもたらし、早期診断と治療介入へつながることが期待されます。
本研究成果は「Leukemia 」(2024 年 5 月 13 日付電子版)に掲載されました。
?遗伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は、先天的な遺伝子変異が原因で、貧血、血小板減少、好中球減少などの正常な血液細胞を造ることができない病気です。
?高深度プロテオーム解析とゲノム解析を組み合わせた「プロテオゲノム解析」は、IBMFS の早期の診断?治療介入につながることが期待されます。
?高深度プロテオーム解析結果に基づく「標的プロテオーム解析」は、シュワッハマン?ダイアモンド症候群や ADH5/ALDH2 欠損症などの IBMFS に対する有用な診断検査となる可能性があります。
◆详细(プレスリリース本文)は
※1 遗伝性骨髄不全症候群(IBMFS);先天的な遺伝子変異が原因で正常な血液細胞を造ることができない病気。
※2 プロテオーム;生体中に存在するすべてのタンパク質。
※3 次世代シーケンサー(NGS);数千から数百万もの DNA 分子を同時に配列決定できる技術。
※5 質量分析装置;試料に含まれている物質の定性?定量を行う装置。
雑誌名:尝别耻办别尘颈补
論文タイトル:Integrated Proteogenomic Analysis for Inherited Bone Marrow Failure Syndrome
着者名?所属名:
Manabu Wakamatsu 1, Hideki Muramatsu 1†, Hironori Sato 2,3, Masaki Ishikawa 2, Ryo Konno 2, Daisuke Nakajima 2, Motoharu Hamada 1,4, Yusuke Okuno 4, Yusuke Kawashima 2†, Asahito Hama 5, Masafumi Ito 6, Hideto Iwafuchi 7, Yoshiyuki Takahashi 1, and Osamu Ohara 2
1 Department of Pediatrics, 黑料网 Graduate School of Medicine; Showa-ku, Nagoya, 466-8560, Japan.
2 Department of Applied Genomics, Kazusa DNA Research Institute; Kisarazu, Chiba, 292-0818, Japan.
3 Department of Pediatrics, Chiba University Graduate School of Medicine; Chuo-ku, Chiba, 260-8670, Japan.
4 Department of Virology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences; Mizuho-ku, Nagoya, 464-0083, Japan.
5 Department of Hematology and Oncology, Children’s Medical Center, Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya First Hospital; Nakamura-ku, Nagoya, 453-8511, Japan.
6 Department of Pathology, Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya First Hospital; Nakamura-ku, Nagoya, 453-8511, Japan.
7 Department of Pathology, Shizuoka Children’s Hospital; Aoi-ku, Shizuoka, 420-095, Japan.
DOI:
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