黑料网大学院医学系研究科 神経遺伝情报学の 増田章男(ますだあきお)准教授らの研究グループは、RNA 結合タンパク質(RBP)が形成する核内全体に広がる網目構造が、RNA スプライシングを駆動していることを発見しました。
ヒトを含む真核生物では、核内でスプライシングに代表される RNA 代謝を行うことで、限られた遺伝情報から種々の mRNA を作り出し、生命活動に必須な蛋白の多様性を生み出しています。スプライシングは、RBP を中心に数百個の分子が共同して進める複雑なステップですが、その時空間的な分子制御の詳細は未解明でした。
今回、超解像顕微镜(※4)による細胞の精細観察により、スプライシングを直接に担うRBP 群(core RBP)とその活性を調節して間接的にスプライシングを制御する RBP 群(accessory RBP)が、核内で混ざり合うことなく絡み合う網目状の構造を構築していることを発見しました。Core RBP と accessory RBP は、それぞれ荷電性と非荷電性という異なる性質の天然変性領域(IDR)を持っており、その液―液相分離活性を介して互いに混和しない液滴を形成します。細胞核内では、さらに新生 RNA に結合することで繊維状構造をとります。この RBP 繊維が新生 RNA 上の空間占有をめぐって競合し、各局所で優位となった RBP 群がそれぞれの機能を発揮することで、スプライシングを駆動することを解明しました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経変性疾患の病原変異は、RBP の IDR に集積していることが知られています。本研究で、IDR 変異が網目構造を乱すことや、人為的な網目構造の改変が神経変性疾患に関わる異常スプライシングを引き起こすことを明らかにしています。
本研究では、核内網目構造による RNA スプライシング駆動という新規分子機構解明を基に、RNA 代謝異常が関与する疾患の病態解明と治療に寄与することが期待されます。
本研究成果は、「Molecular Cell 」 (2024 年 7 月 24 日付電子版)に掲載されました。
• RNA 代謝(※1)を担う RNA 結合タンパク質(RBP)群が核内で構築する基本構造を同定しました。
• これら RBP は、性質の異なる蛋白領域を持つことで水と油のように分離した液滴を形成し、さらに RNA と一体化することで繊維状となって網目構造を細胞核内に広げます。
• 各 RBP 網目構造は、新生 RNA 上の空間占有をめぐって競合することで、スプライシング(※2)をはじめとする RNA 代謝を駆動します。
• ALS をはじめとする神経変性疾患の病原変異は、RBP の天然変性領域(IDR)(※3)に集積しています。本研究で、IDR 変異がもたらす網目構造の乱れと異常スプライシングの関係を明らかにしました。
◆详细(プレスリリース本文)は
※1 RNA 代謝
RNA は、DNA の配列を写し取って作られた後、様々な加工や取捨選択を経て機能性 RNA となっていきます。この一連のステップを RNA 代謝と総称しており、真核細胞で盛んに行われています。RNA 代謝には、スプライシングをはじめ、5′キャッピング,3′末端プロセシング,RNA 修飾、輸送,分解など,様々な過程が含まれています。
※2 スプライシング
DNA から転写された新生 RNA の一部を切り取り、必要な RNA 領域同士をつなげる機構のことをスプライシングと呼びます。スプライシングで残る部位がエクソン、失われる部位がイントロンです。スプライシングは、特に真核生物で認められる機構です。
※3 天然変性領域(IDR:Intrinsically Disordered Region)
蛋白中で决まった立体构造をとらずにひも状に揺らいでいる领域を指します。荷电や极性などが偏った、限られたアミノ酸组成で构成されることが特徴です。近年、この领域は液―液相分离と呼ばれる膜に依存しない机能性分画形成を促进することが明らかとなり、注目されています。
※4 超解像顕微鏡
従来の光学顕微鏡の理論限界値 (200 nm 程度) を超える解像度で試料を観察することのできる顕微鏡のこと。
雑誌名:Molecular Cell
論文タイトル:Blending and separating dynamics of RNA-binding proteins develop architectural splicing networks spreading throughout the nucleus
著者名?所属名:Akio Masuda,1,3 Takaaki Okamoto,1,3 Toshihiko Kawachi,1 Jun-ichi Takeda,1 Tomonari Hamaguchi,1 Kinji Ohno,1,2
1Division of Neurogenetics, Center for Neurological Diseases and Cancer, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
2Graduate School of Nutritional Sciences, 黑料网 of Arts and Sciences, Nisshin, Japan
3Equal contribution
DOI:
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