黑料网大学院医学系研究科の島田 緑 教授は山口大学共同獣医学部の学部 6 年生(当時)佐藤悠紀さん、羽原 誠 助教らとの共同研究で、がん悪化を促す転写因子E2F1 の分解メカニズムを解明しました。E2F1 は細胞周期を促進し、がん細胞での異常な増殖に寄与するため、その分解を制御することはがん治療の重要な戦略となり得ます。今回の研究では、ユビキチン化*4 酵素複合体のサブユニットである FBXW7 がE2F1 をユビキチン化し、分解を促進することを発見しました。また、 E2F1 のSer403 のリン酸化が FBXW7 との結合を誘導し、E2F1 の分解を促進することがわかりました。一方で、カルシウム依存性脱リン酸化酵素であるカルシニューリンがE2F1 の Ser403 を脱リン酸化することで、FBXW7 との結合を抑制し、E2F1 を安定化することを明らかにしました。さらに、細胞内カルシウム量によって E2F1 のタンパク量が制御されていることを明らかにしました。このことから、カルシウムチャネル阻害剤やカルシニューリン阻害剤が E2F1 の発現を低下させ、がん細胞の増殖を抑制することがわかりました。
本研究によって、カルシウムチャネルやカルシニューリンの阻害が新たながん治疗戦略となりうる可能性が期待されます。
本研究成果は、2024 年 10 月 3 日付「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」に掲載されました。
• がんの悪性化を促す転写因子 E2F1*1 の分解制御因子をスクリーニングし、腫瘍抑制因子 FBXW7*2 が E2F1 を分解する主要な因子であることを明らかにしました。
• 脱リン酸化酵素カルシニューリン*3 が E2F1 を脱リン酸化し、E2F1 と FBXW7 との結合を抑制することで E2F1 を安定化することがわかりました。
• 細胞内カルシウム量によって E2F1 タンパク量が制御されることがわかりました。
◆详细(プレスリリース本文)は
*1) E2F1:細胞周期の G1 から S 期への移行を促進する転写因子で、がん細胞での過剰発現は腫瘍の増殖や進行に関与する。
*2) FBXW7:ユビキチン化酵素複合体の基質認識サブユニットで、特定の基質タンパク質(c-Myc、Notch、Cyclin E など)のリン酸化を認識して結合する。ユビキチン化を促進することにより、プロテアソーム依存的な分解を誘導する。このような機能により、細胞の成長や分裂を制御し、腫瘍形成を防ぐ。
*3) カルシニューリン:細胞内のカルシウム濃度に応答して活性化されるカルシウム依存性のセリン/スレオニン脱リン酸化酵素で、さまざまなタンパク質の脱リン酸化を行う。
*4) ユビキチン化:ユビキチンという小さなタンパク質が他のタンパク質に付加される修飾で、主にタンパク質の分解を標識する役割を持つ。ユビキチンリガーゼはユビキチンを付加する酵素で、ユビキチン化されたタンパク質はプロテアソームによって分解されたり、他の細胞内プロセスに影響を与えたりする。
雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)
論文タイトル:Calcineurin-mediated dephosphorylation stabilizes E2F1 protein by suppressing binding of the FBXW7 ubiquitin ligase subunit
著者:Yuki Sato1,a, Makoto Habara1,a, Shunsuke Hanaki1, Takahiro Masaki1, Haruki Tomiyasu1, Yosei Miki1, Masashi Sakurai2, Masahiro Morimoto2, Daigo Kobayashi3, Tatsuo Miyamoto3,4, and Midori Shimada1,5,*
1Department of Veterinary Biochemistry, Yamaguchi University
2Department of Veterinary Pathology, Yamaguchi University
3Department of Molecular and Cellular Physiology, Graduate School of Medicine, Yamaguchi University
4Division of Advanced Genome Editing Therapy Research, Research Institute for Cell Design Medical Science, Yamaguchi University
5Department of Molecular Biology, Graduate School of Medicine, 黑料网
aThese authors equally contributed to this study.
*Correspondence author
DOI:
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