大阪大学大学院基础工学研究科の高桥英史讲师、大学院生の黒坂祐介さん(博士前期课程)、石渡晋太郎教授らの研究グループは、黑料网大学院理学研究科の中埜彰俊助教らと共同で、电気伝导性材料であるトポロジカル半金属※4においてはじめて、电気机械応答の一种であるフレキソエレクトリック効果の観测に成功しました。
電気エネルギーと力学的な振動の相互作用を指す「電気機械応答」には、圧电効果、フレキソエレクトリック効果などがあります。特定の物質に機械的な圧力を加えると正電荷と負電荷が発生する圧电効果は、一般的に空间反転対称性※5の破れた絶縁体において観測されます。また、これと似た現象であるフレキソエレクトリック効果は、空间反転対称性の有無によらず観測される現象として知られています。フレキソエレクトリック効果を利用すると、結晶の振動を電気的に制御したり、結晶を歪ませることで電圧を発生させることが可能になります。一方で、これらの電気機械応答は通常、絶縁体材料で報告されており、電気伝導性を持つ材料の場合には電子の遮蔽効果があるために観測は困難であると考えられていました。今回、研究グループは、結晶の上下に非対称に電極を付け、交流電流を加えることで結晶が振動する逆フレキソエレクトリック効果を観測しました。さらにこの効果は、結晶の反転対称性の有無によらずに観測されること、またトポロジカル半金属という特殊な材料において巨大化することを明らかにしました。本研究は、新しい振動発電や振動センサーとしての応用につながることが期待されます。
この成果は、英文誌Communications Materialsの 2024年10月号に、2024年10月25日(日本時間)掲載されました。
◆ トポロジカル※1なバンド构造をもつ导电性材料において、非対称な交流电流を流すことで结晶が歪む电気机械応答(フレキソエレクトリック効果※2)の観测に成功。
◆ これまで、圧电効果※3やフレキソエレクトリック効果などの电気机械応答は、电気伝导性を示さない强诱电体などにおいて観测されており、导电性材料では伝导电子の遮蔽効果があるためこのような応答の観测は困难であると考えられていた。
◆ フレキソエレクトリック効果を用いた、新しい振動センサーや環境振動を用いた発電に期待。
◆详细(プレスリリース本文)はこちら
※1 トポロジカル
物体の形状や空间の构造に対する変形の种类に関わる概念であり、たとえば、伸ばしたり缩めたりしても切れ目を作らないような変形(连続変形)であれば、形が変わっても同じものとみなす。物性物理における「トポロジカル」という概念は、物质の电子的性质がトポロジーに基づく安定性を持ち、通常の相転移や物质の性质とは异なる特殊な挙动を示すものを指し、具体的な材料にはトポロジカル絶縁体、トポロジカル半金属、トポロジカル超伝导体がある。
※2 フレキソエレクトリック効果
結晶に曲げ変形を加えることで、電気分極を誘起させる現象である。圧电効果とは異なり、結晶の
空间反転対称性の有無によらず発生する。逆に、結晶表面に非対称な電場(空間勾配を持つ電場)を印加することで機械的な変形を生じさせる逆フレキソエレクトリック効果がある。
※3 圧电効果
空间反転対称性が無い結晶において、機械的な力(圧力)を加えると、結晶表面に電荷が発生する現象。逆に、結晶に電場を加えることで機械的に変形する逆圧电効果がある。
※4 半金属
金属と半导体の中间の性质を示す物质群の総称。伝导バンドの下部と価电子バンドの上部がフェルミ準位をわずかにまたいだバンド构造を持つ物质。伝导バンドと価电子バンドが重なり、フェルミ面近傍に线形なバンド分散が実现した场合には、ディラック?ワイル半金属のようなトポロジカル半金属と呼ばれる。
※5 空间反転対称性
結晶を構成する原子の空間座標 (x, y, z) を (-x, -y, -z) に移すような変換のことを空間反転と呼び、そのような変換を施しても原子配列が不変であるとき、その構造は空间反転対称性をもつことになる。
本研究成果は、英文誌Communications Materialsの 2024年10月号に、2024年10月25日(日本時間)掲載されました。
タイトル:“Observation of converse flexoelectric effect in topological semimetal”
著者名:Hidefumi Takahashi, Yusuke Kurosaka, Kenta Kimura, Akitoshi Nakano, Shintaro Ishiwata
DOI:
なお、本研究は、科学研究费助成事业(碍础碍贰狈)「极性金属における机能创成」、「非対称外场を用いたトポロジカル半金属での电気机械応答の开拓」、「準安定スピントロニクス材料の戦略的高圧合成」(闯笔21贬01030、闯笔22贬0034、闯笔24碍00570)、「アシンメトリ量子物质の开拓」(闯笔23贬04871)、闯厂罢创発的研究支援事业「トポロジカル量子材料におけるフレキソエレクトロニクスの确立」(闯笔惭闯贵搁236碍)、村田学术振兴财団、矢崎科学技术振兴记念财団、旭硝子财団の一环として行われました。