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工学

2024.12.23

稲穂への低温プラズマ処理による酒米品質の向上 ~先端スマートシステムの構築で栽培条件の最適化に貢献~

猛暑をはじめとする気候変动が农作物の収穫に大きな影响を及ぼす中、その対処のためにも农业のスマート化が求められています。そのためには気象、降水量、施肥とともに生育や収量などのビッグデータを収集し、コンピューティングを活用して様々な栽培环境や生育状况を制御可能とするシステムを构筑することが重要です。
近年、大気圧低温プラズマ(低温プラズマ)注2)を医療?農業などバイオ分野で応用する研究が盛んに行われ、国内外から注目されています。黑料网低温プラズマ科学研究センターの堀 勝 特任教授、橋爪 博司 特任講師らの研究グループは、富士通クライアントコンピューティング株式会社(本社:神奈川県川崎市 代表取締役社長:大隈健史 以下、FCCL) との共同研究で、水稲栽培における低温プラズマ処理注3)が玄米の収量や品质に有効であることを见出しています。
本研究では生命农学研究科附属東郷フィールド(愛知県東郷町)のハウスにおいて、酒米品種「山田錦」の出穂後の開花後日数を規定してプラズマ処理を行うことで、その品质向上が示されました。さらに、フィールドの栽培環境を模擬した人工気象器内での試験でも同様の結果が得られました。
加えてこの人工気象器に温湿度や照度、颁翱2濃度、水位などの各種センサーとカメラを設置した”Smart Agriculture System”を構築しました。このシステムにより収集した各種データを活用することで様々な栽培環境を再現できるようになりました。
環境変化に応じて最適なプラズマ処理法を施す栽培レシピを作成するためのビッグデータの蓄積には、様々な栽培環境を模擬できる本システムなどコンピューティングによる制御が非常に有効です。滨颁罢农业とプラズマ技術を融合し、作物栽培を制御可能とすることで持続可能な開発目標 (SDGs) 達成のために大きな貢献が期待できます。
本研究成果は、2024年11月27日付学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

 

【ポイント】

?酒造好適米 (酒米) 品種「山田錦」の出穂後、穎果(えいか)一粒ずつにプラズマを照射したところ、日本酒製造で重要となる心白注1)含有率 (心白歩合) が増加した。
?現地試験のほか、人工的に気象変化など実際の栽培環境を模擬する”Smart Agriculture System”でも同様の結果が得られた。
?本システムにより、种々の环境変化に対してプラズマを用いた最适な栽培条件を构筑することが可能。

 
◆详细(プレスリリース本文)はこちら

 

【用语説明】

注1)心白:
デンプン结晶化が不完全で白浊した构造が胚乳の中心部に见られるのを心白と呼び、これが高発现するのが酒米品种の特徴?である。日本酒製造工程では麹菌との反応を円滑に进めるため心白が重要であり、特に大吟醸といった高品质な日本酒では50%以上まで精米することとなる。
注2)低温プラズマ:
プラズマは固体?液体?気体に続く物質の第4の状態といわれており、近年、電子温度に対しガス温度が常温 (に近い) 状況でプラズマを発生することが可能となった。これにより様々な産業への応用が進められている。
注3)低温プラズマ処理:
常温常圧下でのプラズマ生成の実现によって、生体へのプラズマ処理も可能となった。本研究で実施した、生体にプラズマを直接照射する方法(直接照射)のほかに、水や溶媒にプラズマ照射して调製されたプラズマ活性化溶液による処理(间接照射)といった様々なアプローチが可能であり、农业?医疗などの分野へのプラズマ技术の応用が期待されている。

 

【论文情报】

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Direct plasma treatment of caryopses after flowering in brewer’s rice cultivar Yamadanishiki enhanced those grain qualities through “Smart Agriculture System”
着者:Hiroshi Hashizume, Hidemi Kitano, Hiroko Mizuno, Akiko Abe, Shih-Nan Hsiao, Genki Yuasa, Satoe Tohno, Hiromasa Tanaka, Shogo Matsumoto, Hitoshi Sakakibara, Eisuke Kita, Yoji Hirosue, Masayoshi Maeshima, Masaaki Mizuno, and Masaru Hori
※本学関係教员は下线
DOI: doi.org/10.1038/s41598-024-78620-y
URL:

 

【研究代表者】