医歯薬学
2025.02.05
血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫に対する世界初の臨床試験の長期成績の公表 ?患者さんの予後の改善につながる標準的治療法の持続的な効果が明らかに?
黑料网医学部附属病院血液内科の島田 和之 講師、同大学大学院医学系研究科血液?肿疡内科学の清井 仁 教授、同大学医学部附属病院先端医療開発部の鍬塚八千代 病院講師、三重大学大学院医学系研究科先進血液腫瘍学の山口 素子 教授らは、IVL 研究会(木下 朝博 代表)※1 に参加する国内の多施設の研究者と共同して、血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫(IVLBCL)※2 の患者さんを対象とした世界初の前方视试験※3 を行いました。2020 年に最初の解析結果が報告され、良好な治療成績が得られていましたが、長期間の観察による持続的な有効性と安全性の確認が求められていました。今回、長期間の観察においても、その有効性が維持されていることが確認され、この治療法の有効性と安全性がより強固なものであることが確認されました。
悪性リンパ腫は、血液がんの一種で、多様な病型を持つことが知られています。IVLBCL は稀な悪性リンパ腫の一種で、悪性リンパ腫の一般的な特徴であるリンパ節の腫れが認められないため、しばしば診断が難しいことで知られてきました。IVLBCL の治療は、従来、悪性リンパ腫の中で最も高頻度に生じるびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)※4 と同じ R-CHOP 療法※5 が行われてきましたが、経過中における中枢神経(脳)への病変の広がりが多いことが、治療上の課題となってきました。また、稀で診断が難しいこともあって、IVLBCL に対する治療を評価した前方視試験の報告は、2020 年に報告された本研究の最初の解析結果の報告以外ありませんでした。
本研究では、R-CHOP 療法と中枢神経への病変の広がりを予防する治療(高用量メトトレキサート療法と髄腔内抗がん剤注射)を組み合わせた治療を試験治療とする臨床第Ⅱ相試験※6 を行いました。未治療で診断時に中枢神経に明らかな病変を認めない IVLBCL の 38 例の患者さんに参加頂き、2020 年の最初の報告では、主要評価項目である 2 年無増悪生存割合が 76%、副次的評価項目である 2 年全生存割合が92%、2 年二次性中枢神経浸潤割合が 3%でした。今回長期間の観察結果が得られ、5 年無増悪生存割合が 68%、5 年全生存割合が 78%、5 年二次性中枢神経浸潤累積発症割合が 3%でした。最初の解析以降、新しく病気の再発を来した患者さんや中枢神経に病変が広がった患者さんは認められず、治療効果が持続的なものであることが確認されました。最初の解析以降発生した副作用(有害事象)は、許容の範囲内でした。本研究は、IVLBCL を対象とした世界で初めての前方視試験であり、最初の解析結果が報告されて以降、この治療法が現在の標準的治療法の 1 つとして本邦の実際の診療で行われてきました。今回の解析結果で、その方針が正しかったことが改めて確認されたと言えます。本研究は、英科学誌 Lancet 系列のオープンアクセス誌である「eClinicalMedicine」電子版(グリニッジ標準時 2025 年 1 月 31日)に掲載されました。
?血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫は、稀な悪性リンパ腫の一病型で、リンパ腫の一般的な特徴であるリンパ節腫脹を欠き、診断が難しいことで知られています。この病気の患者さんの治療では、悪性リンパ腫の中で最も患者さんの数が多いびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫と同じ R-CHOP 療法が行われてきましたが、中枢神経(脳)への病変の広がりが多いことが課題となってきました。
?本研究では、血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫の患者さんに対して、びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の標準治療である R-CHOP 療法に中枢神経への病変の広がりを予防する治療(高用量メトトレキサート療法と髄腔内抗がん剤注射)を組み合わせる治療法の安全性と有効性を調べる臨床第Ⅱ相試験を行いました。2020 年に初めての解析結果が得られ、良好な治療成績が得られていましたが、より長期間の観察による安全性と有効性の確認が求められていました。
?長期間の観察によっても、有効性が維持され、課題であった中枢神経への病変の広がりも抑えられていました。長期的な治療成績が明らかになったことで、血管内大細胞型B 細胞リンパ腫の患者さんに対するこの治療法の安全性と有効性がより強固なものになったと?えます。
◆详细(プレスリリース本文)は
※1 IVL 研究会
血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫に関する研究の趣旨に賛同した国内の多施設の研究者が参加する研究グループ
※2 血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫(IVLBCL)
血液がんの中で最も発症する患者さんの数が多い悪性リンパ肿の一种。日本では、全悪性リンパ肿の患者さんの1%程度を占めると推测されている。発热、全身のだるさ、息切れなどの症状で発症する。悪性リンパ肿の特徴であるリンパ节の肿れを认めず、しばしば诊断が困难であることが知られている。
※3 前方視試験
予め定めた検査や治疗などの手顺に従って、患者さんに试験に参加顶き、主に治疗法の有効性を评価する试験
※4 びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(DLBCL)
悪性リンパ腫の中で最も患者さんが多い病型。全リンパ腫のおよそ 30?40%を占める。リンパ節の腫れで発症するだけでなく、全身のさまざまな臓器から発症することがある。病気のタイプや発症部位により経過が異なることがあるため、後述の R-CHOP 療法を基本にして病気に合わせた治療を行うことがある。
※5 R-CHOP 療法
DLBCL に対する現在の標準治療。リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの 5 つの薬剤を組み合わせて行う多剤併用化学療法。
※6 臨床第Ⅱ相試験
前方视试験の中で、比较的少数の患者さんを対象に、予め定めた治疗薬や治疗法の有効性と安全性を调べる临床试験。
雑誌名:别颁濒颈苍颈肠补濒惭别诲颈肠颈苍别
論文タイトル:Rituximab, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, and prednisolone combined with high-dose methotrexate plus intrathecal chemotherapy for newly diagnosed intravascular large B-cell lymphoma (PRIMEUR-IVL): long-term results of a multicentre, single-arm, phase 2 trial.
着者:Shimada K, Yamaguchi M, Kuwatsuka Y, Matsue K, Sato K, Kusumoto S, Nagai H, Takizawa J, Fukuhara N, Nagafuji K, Miyazaki K, Ohtsuka E, Okamoto A, Sugita Y, Uchida T, Kayukawa S, Wake A, Ennishi D, Kondo Y, Meguro A, Kin Y, Minami Y, Hashimoto D, Nishiyama T, Shimada S, Masaki Y, Okamoto M, Atsuta Y, Kiyoi H, Suzuki R, Nakamura S, Kinoshita T.
DOI:
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