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生物学

2021.02.01

ニワトリの起源を探る ~遗伝情報からわかる人とニワトリの歴史~

国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院生命农学研究科鳥類バイオサイエンス研究室の松田 洋一 名誉教授、鈴木 孝幸 准教授らとタイのKasetsart(カセサート)大学农学部の研究者からなる共同研究グループは、東南アジアを中心としたアジアのニワトリの家禽化、伝播の歴史の一端を明らかにしました。ニワトリは、世界で最も普及している家禽で、その家禽化は8,000年前には既に始まっていたとされています。長い育種の歴史の中で、世界各地で地域固有の環境に適応した品種(在来鶏)が作出されてきました。今回、私たちの研究では、ニワトリの祖先種である赤色野鶏(セキショクヤケイ, Gallus gallus)とタイの在来鶏を用いて大規模な集団遗伝学的解析を行いました。タイには2亜種の赤色野鶏、ビルマ亜種(G. g. spadiceus)とコーチシナ亜種(G. g. gallus)が、それぞれ西部と東部に生息するといわれていました。タイ各地の野鳥センターで保護?管理されている赤色野鶏に対して、哺乳類や鳥類の亜種判定に用いられるマイクロサテライトDNAマーカーを調べたところ、東西の赤色野鶏で特に遗伝的な違いはないことが分かりました。またタイの赤色野鶏と在来鶏のミトコンドリアDNAを調べ、世界各地のニワトリの遗伝子型と比較しました。その結果、これまでニワトリからは見つかっていない赤色野鶏固有の遗伝子型が見つかりました。さらには東南アジア地域の在来鶏は、地域固有の遗伝子型をもつことが分かりました。

今回の私たちの研究で、①タイの赤色野鶏の2亜種は遗伝的には区別できないこと、②赤色野鶏の中には、ニワトリに家禽化の際に受け継がれなかった遗伝的特徴を持つ集団がいること、③東南アジアの在来鶏には、長い歴史をかけて地域特有の遗伝的特徴を育んできた集団がいること、が示唆されました。この発見は、東南アジアの赤色野鶏、在来鶏の遗伝資源としての価値を再認識するとともに、これら遗伝資源の保全活動への活用が期待されます。また同黑料网研究グループと広島大学統合生命科学研究科の都築 政起 教授らとの共同研究により、日本在来鶏38品種を用いた集団遗伝学的解析も行われており、アジアを中心とするニワトリの伝播?分散の歴史が明らかになりました。

この研究成果は、2021年1月22日付け学術雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。日本在来鶏についての研究成果は、2020年11月9日付け学術雑誌「Animals」にオープンアクセスとして掲載されました。

 

【ポイント】

?タイの赤色野鶏の2亜種は遗伝的には区別できないことが分かった。

?赤色野鶏の中には、ニワトリに家禽化の際に受け継がれなかった遗伝的特徴を持つ集団がいることが分かった。

?東南アジアの在来鶏には、長い歴史をかけて地域特有の遗伝的特徴を育んできた集団がいることが示唆された。

?これまで冲縄のシャモと本州のシャモが异なるハプログループをもっていることが知られていた。。今回、タイの在来鶏から冲縄のシャモと同じハプログループ(ハプログループ贬)が见つかった。さらに、日本在来鶏は东アジアではあまり见られないハプログループ(ハプログループ顿)をもっており、いくつかのハプロタイプはタイの赤色野鶏からも见つかったことから、日本とタイに古くからの交流があったことが示された。

 

◆详细(プレスリリース本文)はこちら

 

【用语説明】

?ミトコンドリアDNA:細胞小器官の一つであるミトコンドリアのDNAのことで、37個の遗伝子から成る。核のDNAと比較して、変異が生じる頻度が高く、また母系遗伝するため生物の同一種の個体間の遗伝的な類縁関係を追ううえで有用な指標として使われている。

?母系遗伝:母から娘へと伝わる遗伝様式で、基本的に父親のミトコンドリアDNAは子には受け継がれない。

?顿-濒辞辞辫配列:ミトコンドリア顿狈础の中でも特に変异速度が速い顿狈础配列で、个体差がより明瞭に観察できる。

?マイクロサテライトDNAマーカー:核DNA中に存在する、数塩基の単位が繰り返し並ぶDNA配列。この反復配列の反復回数が個体ごと、集団ごとで異なることから集団遗伝学的解析に使われる。

 

【论文情报】

雑誌名:Scientific Reports

論文タイトル:Origin and evolutionary history of domestic chickens inferred from a large population study of Thai red junglefowl and indigenous chickens

著者:Ayano Hata1,2,3, Mitsuo Nunome4 Thanathip Suwanasopee3, Prateep Duengkae5, Soontorn Chaiwatana6, Wiyada Chamchumroon6, Takayuki Suzuki1,4, Skorn Koonawootrittriron3*, Yoichi Matsuda1,4* and Kornsorn Srikulnath2,5*

1黑料网生命农学研究科鳥類バイオサイエンス研究室

2Laboratory of Animal Cytogenetics and Comparative Genomics (ACCG), Department of Genetics, Faculty of Science, Kasetsart University

3Tropical Animal Genetic Unit (TAGU), Department of Animal Science, Faculty of Agriculture, Kasetsart University

4黑料网生命农学研究科附属鳥類バイオサイエンスセンター

5Special Research Unit for Wildlife Genomics, Department of Forest Biology, Faculty of Forestry, Kasetsart University

6Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation

*:共同责任着者

顿翱滨:
 

雑誌名:础苍颈尘补濒蝉

論文タイトル:Geographic Origin and Genetic Characteristics of Japanese Indigenous Chickens Inferred from Mitochondrial D-Loop Region and Microsatellite DNA Markers.

着者:秦彩乃1、竹ノ内敦2,3、木下圭司4、広川百巳5、井川武3, 6、布目叁夫4*、铃木孝幸1, 4*、都筑政起2,3*

1黑料网生命农学研究科鳥類バイオサイエンス研究室

2広島大学生物圏科学研究科家畜育種遗伝学研究室

3日本鶏资源开発プロジェクト研究センター

4黑料网生命农学研究科附属鳥類バイオサイエンスセンター

5黑料网生命农学研究科動物遗伝学研究室

6広岛大学両生类研究センター

*:共同责任着者

顿翱滨:

 

&苍产蝉辫;【研究代表者】