国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院医学系研究科産婦人科学の梶山 広明(かじやま ひろあき)教授、芳川 修久(よしかわ のぶひさ)助教の研究グループは同大学医学部附属病院先端医療?臨床研究支援センターの水野 正明(みずの まさあき)病院教授ならびに同大学低温プラズマ科学研究センターの堀 勝(ほり まさる)センター長の研究グループとの共同研究により、卵巣がんに特徴的な腹腔内に散らばったがん細胞に対するプラズマ※1 活性溶液※2 の播种※3 抑制効果の新たな知見を得ました。また、臨床応用を見据えたプラズマ活性溶液による効果的な治療法の開発に成功しました。これまで黑料网では、独自に開発した超高密度プラズマ発生装置を用いて作成したプラズマ活性溶液による脳腫瘍、胃がん、膵がん、卵巣がんをターゲットとした研究を行っており、プラズマ活性溶液の有用性を明らかにしてきました。今回の研究では、肉眼的に発見が難しい微小な卵巣がんの腹膜播种をプラズマ活性溶液が抑制するメカニズムとして、免疫細胞の一つであるマクロファージ※4の関与を明らかにしました。さらに、臨床応用を見据えて開発したプラズマ活性溶液製造装置により作成したプラズマ活性溶液を用いた腹腔内洗浄治療は、重篤な副作用を示すことなく、卵巣がん腹膜播种モデルマウスの生存期間を有意に延長させました。これらの結果より、プラズマ活性溶液の腹腔内洗浄治療を、明らかな腹膜播种を認めない早期の卵巣がんの標準的治療に加えることで、再発予防につながる可能性を示しました。
この研究成果は、スイス科学雑誌「Cancers」( 2021 年 3 月 7 日付の電子版)に掲載されました。
○ プラズマ活性溶液による卵巣がん腹膜播种抑制効果において、免疫細胞の一つであるマクロファージの関与を明らかにした。
○ 卵巣がん腹膜播种モデルマウスに対しプラズマ活性溶液による腹腔内洗浄治療を行ったところ、生存期間を有意に延長した。
○ 本成果は、再発防止を目的とした早期の卵巣がん治療に有効である可能性が示された。
◆详细(プレスリリース本文)は
※1 プラズマ:電離状態の気体。宇宙の 99%以上はプラズマから構成されている。プラズマを用いて微細加工などのモノづくりは全産業の基幹技術となっている。特に近年、真空下でなく大気圧下で熱をあまり発生することなくプラズマを生成する技術開発が進み、大気圧低温プラズマが注目され医療応用する試みが盛んに行われるようになった。
※2 プラズマ活性溶液:プラズマを照射した溶液のことで、培養液やリンゲル液などにプラズマを照射すると抗腫瘍効果など、細胞?組織に多様な生理学的応答を示すことがこれまでの研究で分かってきている。
※3 播種:体の中にある大腔にがん細胞が種を撒いたように無秩序に広がること。
※4 マクロファージ:免疫細胞である白血球の 1 種。主に生体内で食細胞として働き、抗原提示を行う。また、活性化されたマクロファージは、様々な機能を有することが知られている。
掲雑誌名:颁补苍肠别谤蝉
論文タイトル:Preclinical verification of the efficacy and safety of aqueous plasma for ovarian cancer therapy
著者:Kae Nakamura1,2, Nobuhisa Yoshikawa1, Yuko Mizuno3, Miwa Ito3, Hiromasa Tanaka2,3, Masaaki Mizuno3, Shinya Toyokuni2,4, Masaru Hori2, Fumitaka Kikkawa1 and Hiroaki Kajiyama1
所属:1Department of Obstetrics and Gynecology, 黑料网 Graduate School of Medicine, Tsurumai-cho 65, Showa-ku, Nagoya 466-8550, Japan
2Center for Low-temperature Plasma Sciences, 黑料网, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8603, Japan
3Center for Advanced Medicine and Clinical Research, 黑料网 Hospital, Tsurumaicho 65, Showa-ku,Nagoya 466-8550, Japan
4Department of Pathology and Biological Responses, 黑料网 Graduate School of Medicine, Tsurumai-cho 65, Showa-ku, Nagoya 466-8550, Japan
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