工学
2021.03.30
物質移動を支配する欠陥の原子レベル構造を決定 ~微量異種イオンと隣り合う酸素の抜け孔が見えた!~
国立大学法人東海国立大学機構 黑料网未来材料?システム研究所の 大塚 真弘 講師、武藤 俊介 教授らは、一般财団法人ファインセラミックスセンターの 田中 誠 博士らの研究グループとの共同研究において、透過电子顕微镜により酸化物セラミックスに微量添加された異種イオン(ドーパント)の位置を精密に計測し、それと隣り合う酸素の抜け孔(酸素空孔)まで明らかにしました。
物质への微量な异种元素ドーパントや空孔などの格子欠陥の导入は、半导体や诱电体、超伝导体、磁石、触媒といった机能材料の特性を制御する重要な意味を持ちます。しかし、物质の中に散らばったこのような微量な欠陥の位置や构造を决定することは、従来よく用いられるX线回折を用いた手法では容易ではありませんでした。
本研究では、次世代航空機エンジンのタービン部材の高温環境下における破損を防ぐ保護膜中のチタン酸イットリウムに添加されたアルミニウムを対象とし、結晶に入射した電子線が示す电子チャネリング効果を利用した計測手法によって、ドーパントとその周りの局所的な格子歪みだけでなく、酸素全体の約0.2%しか抜けていないほんの僅かな酸素空孔の位置まで決定することに成功しました。
本手法は、最先端の収差補正电子顕微镜や大型放射光施設を要せずに汎用の分析电子顕微镜で実現可能な方法であるため、このような格子欠陥を含む様々な機能材料の評価手法として世界中に広く展開されることが期待されます。
この研究成果は、2021年3月25日付(日本時間3月26日)で米国科学雑誌「Journal of the American Ceramic Society」の電子版に掲載されました。
?机能材料に対する微量な异种元素ドーパントや空孔などの格子欠陥の导入は、机能材料の诸特性を决定する重要な役割を担うが、その位置や量の计测は容易ではなかった。
?本研究では、透過电子顕微镜(TEM)注1)とそれに付随したエネルギー分散型X线分光(贰顿齿)注2)装置を用い、酸化物セラミックスに导入されたドーパントの位置だけでなく、その周りに导入された格子歪みや酸素空孔の存在まで明らかにした。
?ドーパントや空孔を含む半导体や诱电体、超伝导体、磁石、触媒などの様々な机能材料の评価手法として、本手法の幅広い材料开発分野への展开が期待できる。
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注1)透過电子顕微镜(TEM):高電圧で加速した電子を薄膜化した試料に照射し、試料を透過してきた電子線を電磁レンズにより拡大して結像することで試料の微細構造を観察する顕微鏡。拡大像に限らず、電子回折像を使った結晶構造解析や分光機器と組み合わせた元素分析なども可能である。
&苍产蝉辫;注2)エネルギー分散型X线分光(贰顿齿):电子线が试料を透过する际に発生した齿线を分光することで物质に含まれる元素の种类や量を评価する分析方法。
[1] M. Tanaka, S. Kitaoka, M. Yoshida, O. Sakurada, M. Hasegawa, K. Nishioka, and Y. Kagawa. “Structural stabilization of EBC with thermal energy reflection at high temperatures”, J. Eur. Ceram. Soc.,37, 4155–4161(2017).
[2] S. Muto and M. Ohtsuka, “High-precision quantitative atomic-site-analysis of functional dopants in crystalline materials by electron-channelling-enhanced microanalysis”, Prog. Cryst. Growth Charact. Mater., 63, 40-61(2019).
雑誌名:Journal of the American Ceramic Society
論文タイトル:2D-HARECXS analysis of dopant and oxygen vacancy sites in Al-doped yttrium titanate
著者: Masahiro Ohtsuka1, Kenji Oda2, Makoto Tanaka3, Satoshi Kitaoka3, and Shunsuke Muto1
所属:1黑料网未来材料?システム研究所,2黑料网大学院工学研究科,3一般财団法人ファインセラミックスセンター
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