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南极の沿岸海域は海氷(注1)の変化と連動した生物および海洋システムの複雑な関係で特徴づけられる海域です。この海域は南极底層水の形成海域であり、世界の気候および環境変動に影響を与える海洋大循环(注2)と関係しています。さらに、この海域の高い生物生产性は、大気二酸化炭素の濃度変化をひきおこす地球規模の炭素循环にも大きな影響を与えています。プランクトンがどれくらい増殖(ブルーム)するかは、大気からの二酸化炭素の除去に影響を与えるのみならず、鯨をトップとする海洋生態系の維持にも重要です。プランクトンのブルームは、南极大陸沿岸域の風の変化をとおして、海氷の生成や移動、並びに、海洋深層からの栄養塩の供給によって変化します。南半球高緯度の風の変化はエルニーニョ南方振动(ENSO)などといった中緯度―低緯度の大気海洋現象とも密接に関連していることがわかっています。しかし、中―長期的な変化についての情報はデータが限られているため、いまだに関連性がよくわかっておらず、将来的にどう変化するかなどについても議論が分かれています。
そこで、国立大学法人東海国立大学機構 黑料网の山根 雅子 研究員(研究当時:東京大学大気海洋研究所博士課程学生)は、東京大学大気海洋研究所の横山 祐典 教授、ニュージーランド ビクトリア大学ウェリントン校のジョンソン博士やマッカイ教授らのグループ、そして米国スタンフォード大学のダンバー教授らが率いる国際研究チームとともに、東南极ウィルクスランド地域沖合のアデリー海盆において採取された170m の堆积物を調べました。その結果、過去11,400 年間において、南极海の生物ブルームは海氷の変動を強く反映して変化していることが確認され、当初は毎年起こっていたブルームが2-7 年の間隔に変化したことが明らかになりました。
今回の研究で得られた結果は、温暖化の進行により海氷が減少することが予測されている南极海の変化について、将来の炭素循环や生物応答など、予測を行うモデルの精度向上などに貢献するための重要な知見となります。 

 

【ポイント】

◆南极海は、大気中の二酸化炭素濃度変化をひきおこす地球表層の炭素循环において大きな役割を持っています。
◆本研究は、二酸化炭素の海洋への取り込みに大きな役割を果たしている南极海の変化が、十年スケールの気候変動と密接に関係があることを過去11,400 年間の記録から明らかにしました。
◆本研究は、南极海の海氷が将来減少すると予測されている中で、南极海がエルニーニョなどの気候変動の影響を敏感に受けやすくなることを示唆しています。

 

◆详细(プレスリリース本文)はこちら

 

【用语説明】

(注1)海氷
海水が冻った氷のことを海氷と呼びます。海水中の塩分は氷に取り込まれないため、海水の塩分は周囲より浓度が高くなり、高密度となるために沉み込みやすくなります。

(注2)海洋大循环
北大西洋を起源とする一周が約1,000 年の循環。海水の塩分と温度差によって駆動されています。熱塩大循環とも呼ばれています。現在北大西洋で毎秒約2000 万m3 の海水が沈み込むことで、高緯度に熱を運び、温暖な気候が保たれていると考えられています。

 

【论文情报】

雑誌名:「Nature Geoscience」(9 月9 日付)
論文タイトル:Sensitivity of Holocene East Antarctic productivity to subdecadal variability set by sea ice
著者:Katelyn M. Johnson, Robert M.McKay, Johan Etourneau, Francisco, J. Jiménez-Espejo, Anya Albot, Chiristina R.Riesselman, Nancy A.N.Bertler, Huw J.Horgan, Xavier Crosta, James Bendle, Kate E. Ashley, Masako Yamane, Yusuke Yokoyama, Stephen F. Pekar, Carlota Escutia and Robert B.Dunbar
DOI 番号:10.1038/s41561-021-00816-y
アブストラクト鲍搁尝:
関連文献1:Yokoyama, Y., et al.(2016) Proceedings of the National Academy of Science, volume 113, pages 2354-2359 (DOI: )
関連文献2:Yamane, M., et al. (2011) Journal of Quaternary Science, volume 26, pages 3-6 (DOI: )
関連文献3:Sproson,A.D., et al. (2021) Quaternary Science Reviews, volume 256, 106841 (DOI: )

 

【研究代表者】