国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院工学研究科の石原 一彰 教授、ウヤヌク ムハメット 准教授、田中 啓貴 博士後期課程学生、請川 直哉 博士前期課程学生(研究当時)の研究グループは、インドール注1)类の不斉注2)脱芳香族化反応注3)を开発し、详细な反応机构解析により、次亜ヨウ素酸塩注4)触媒がインドールの酸化的极性転换注5)に有効であることを见出しました。また、本手法を用いることによって、従来法では合成困难であったインドール诱导体の不斉合成にも成功しました。本手法はインドール系医薬品类开発の有力な合成法となることが期待されます。また、本手法は有毒な金属を使用せず、副生成物は水またはアルコールのみのため、人や地球环境に优しいという利点もあります。日本はチリに続き、ヨウ素生产量世界第2位であり、ヨウ素は资源小国の日本にとって贵重な输出资源であるため、その有効利用は国策(元素戦略)と成りうるものです。
インドールは、トリプトファンと呼ばれる必須アミノ酸や、脳内神経伝達物質であるセロトニンの部分構造として知られており、医薬品の構成成分として特に重要です。インドールは電子豊富な芳香族化合物であるため、その化学反応はインドールの高い求核性を利用したものに限られていました。インドールの求核性を求電子性に极性転换できれば、新たな分子変換反応への展開が期待されますが、電子豊富なインドールの极性転换は難しく、これまで数例の報告例があるのみであり、本研究成果はインドールの有機反応化学のブレイクスルーと言えます。
本研究成果は、2022年3月23日付アメリカ化学会誌「J. Am. Chem. Soc.」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、日本学术振兴会科学研究费助成事业の支援のもと行われたものです。
?キラルアンモニウムヨウ化物注6)を不斉触媒として用いることで、インドールの不斉脱芳香族化反応を开発した。
?詳細な反応機構解析により、インドールの酸化的极性転换に伴い反応が進行していることを見出した。
?従来法では合成困难であったインドール诱导体の合成に成功した。
?反応で得られた生成物が、様々なインドール诱导体へと容易に変换可能であることを见出した。
?インドールを构成成分とする医薬品、香料、染料、フォトクロミック化合物などの开発?製造への応用が期待される。
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注1)インドール:
ベンゼンがピロールに缩合した芳香族复素环式化合物。インドール骨格を有するものとして、生体构成成分であるアミノ酸のトリプトファン、神経伝达物质のセロトニン、さらに抗炎症剤のインドメタシン、抗高脂血浆薬のフルバスタチンなどがある。トリプトファンを出発物质とするインドールアルカロイドは、天然物に多く存在し、その中には血管収缩作用を持つエルゴタミン、抗がん剤にも用いられるビンクリスチンなどがある。染料であるインジゴもこの骨格を有する。
注2)不斉:
分子などが立体构造に対称性を欠く现象。镜像関係にある异性体2种の存在が可能となる。
注3)脱芳香族化反応:
化合物の芳香族性を崩しながら、新たに官能基を导入する化学反応。
注4)次亜ヨウ素酸塩:
次亜ヨウ素酸はヨウ素のオキソ酸の一种で、化学式は贬翱滨である(ヨウ素の酸化数は+1)。次亜ヨウ素酸塩は贬翱滨の塩である。例えば、次亜ヨウ素酸のテトラブチルアンモニウム塩は叠耻4狈翱滨である。
注5)极性転换:
有机化学においてある化合物を化学変换して、その化合物とは逆の电化を有する化合物として用いること。
注6)キラルアンモニウムヨウ化物:
不斉点を有するアンモニウムカチオンのヨウ化物イオン。スピロ型キラル第四級アンモニウムイオンは丸岡?大井らによってキラル相間移動触媒の対カチオンとして先に開発された(総説:Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 42, 4222)。
雑誌名:米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)
論文タイトル:Hypoiodite-Catalyzed Oxidative Umpolung of Indoles for Enantioselective Dearomatization
著者:田中 啓貴(大学院博士後期課程学生)、請川 直哉(大学院博士前期課程学生(研究当時))、ウヤヌク ムハメット(准教授)、石原 一彰(教授)
DOI: 10.1021/jacs.2c01852
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