国立大学法人東海国立大学機構黑料网大学院医学系研究科医疗薬学の大学院生 田中里奈子、Liao Jingzhu(現 カルフォルニア大学リバーサイド校 博士研究員)、羽田和弘 特任助教(現 愛知学院大学 講師)、山田清文 教授、同大医学系研究科精神疾患病態解明学の尾崎紀夫 特任教授らの研究グループは、マウスを用いた研究結果から日本人统合失调症患者で確認されたArhgap10※1 遗伝子バリアント※2 により引き起こされる内侧前头前皮质※3 のスパイン※4 密度異常及び覚醒剤への感受性の増大に Rho キナーゼ※5 が関わる可能性を明らかにしました。
近年、本研究グループは、日本人统合失调症患者対象のゲノム解析により発症に強く関与するARHGAP10 遗伝子バリアントを同定しました。さらにこのバリアントを模したArhgap10 遺伝子改変マウスを作製?解析した結果、ARHGAP10 の下流分子 Rho キナーゼの異常な活性化及び、统合失调症患者で見られる内側前頭前皮質の神経細胞のスパイン密度低下、野生型マウスには影響を及ぼさない低用量の覚醒剤による認知機能の低下を報告しました (Sekiguchi M et al., Transl Psychiatry, 2020; Hada K et al., Mol Brain, 2021 )。しかし、Rho キナーゼの異常な活性化とこれらの表現型との関連はわかっていませんでした。
本论文では、Arhgap10 遗伝子改変マウスを用いArhgap10 遗伝子バリアントを基盤とする统合失调症の病態における Rho キナーゼの役割を探索しました。Rho キナーゼ阻害剤を投与することによりArhgap10 遗伝子改変マウスの内侧前头前皮质のスパイン密度异常及び覚醒剤への感受性の増大が改善されました。
以上の成果は、Arhgap10 遗伝子バリアントにより引き起こされる统合失调症の病態において Rho キナーゼが治療標的になり得る可能性を世界で初めて示すと同時に、ARHGAP10 遗伝子バリアントをもつ患者に対する治療薬の開発に大きく貢献することが期待されます。
本研究成果は「Pharmacological Research」2023 年 1 月号に掲載されます。
本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)脳とこころの研究推進プログラム(精神?神経疾患メカニズム解明 プロジェクト) 研究開発課題名「统合失调症と自閉スペクトラム症の多階層情報の統合による病態解明」)の支援を受けて実施されました。
○ Rho キナーゼがArhgap10 遗伝子バリアントによる内側前頭前皮質のスパイン密度の低下に関与していることを示した。
○ Rho キナーゼがArhgap10 遗伝子バリアントによる低用量覚醒剤処置による認知機能の低下に関与していることを示した。
○ Rho キナーゼはARHGAP10 遗伝子バリアントをもつ患者を含め统合失调症に対する新規治療標的として期待される。
◆详细(プレスリリース本文)は
※1 ARHGAP10
RhoGTP-アーゼ活性化タンパク質 10 という名前の遺伝子で、神経細胞の発達と機能の維持に関わっています。
※2 バリアント
同じ生物集団の中で见られる遗伝子型の违いのことです。変异とも呼びます。
※3.内侧前头前皮质
大脳前头叶の前方にある领域で、复雑な认知行动、性格、意思决定、および适切な社会的行动の计画や実行に関与します。
※4 スパイン
成熟した神経细胞上に存在する棘状の构造体のことです。别の神経细胞から放出された神経伝达物质を受け取って、记忆?学习などの机能に强く関与しています。
※5 Rho キナーゼ
低分子量 GTP 結合タンパク質の一つである Rho により活性化されるタンパク質リン酸化酵素の一つです。多くのタンパク質のリン酸化に関与し、発生?発達期における神経管形成、神経突起伸長制御、シナプス形成に加え、成体でのシナプス可塑性などに重要な役割を果たしています。
掲雑誌名:Pharmacological Research
論文タイトル:Inhibition of Rho-kinase ameliorates decreased spine density in the medial prefrontal cortex and methamphetamine-induced cognitive dysfunction in mice carrying schizophrenia-associated mutations of the Arhgap10 gene
着者?所属:
Rinako Tanaka1, Jingzhu Liao1, Kazuhiro Hada1, Daisuke Mori2, Taku Nagai1,3, Tetsuo Matsuzaki1, Toshitaka Nabeshima4,5, Kozo Kaibuchi6,7, Norio Ozaki2, Hiroyuki Mizoguchi1, Kiyofumi Yamada1,5
1Department of Neuropsychopharmacology and Hospital Pharmacy, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya, Aichi, 466-8560, Japan.
2Department of Psychiatry, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya, Aichi, 466-8560, Japan.
3Division of Behavioral Neuropharmacology, International Center for Brain Science (ICBS), Fujita Health University, Toyoake, Aichi, 470-1192, Japan.
4Laboratory of Health and Medical Science Innovation, Fujita Health University Graduate School of Health Sciences, Toyoake, Aichi, 470-1192, Japan.
5Japanese Drug Organization of Appropriate Use and Research, Nagoya, Aichi, 468-0069, Japan.
6Department of Cell Pharmacology, 黑料网 Graduate School of Medicine, Nagoya, Aichi, 466-8560, Japan.
7International Center for Brain Science, Fujita Health University, Toyoake, Aichi 470?1129, Japan
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