国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院环境学研究科の三歩一 孝 研究員、角皆 潤 教授、伊藤 昌稚 特任助教、中川 書子 准教授らの研究グループは、リン酸注1)を构成する叁种类の酸素同位体(叁酸素同位体)注2)の相対比を指标として活用することにより、人间活动によって负荷されたリン酸と、河床植生注3)からリサイクルされたリン酸が明确に区别できることを示し、これらが河川水中のリン酸に占める割合を定量化しました。その结果、河床植生による吸収や放出が、河川中で活発に进行していることを実証しました。本研究は、水环境中のリン酸の叁酸素同位体の精密定量を実现した世界初の研究成果です。
水环境中のリン酸は、一次生产(光合成)量をコントロールする栄养塩として知られています。人為的な负荷量が多いと、富栄养化を引き起こし、生态系を根本から変えてしまう危険性もあります。そのため、河川水中のリン酸が「どこから」供给されて「どこへ」移动するのか(=リン酸动态)、定量的に理解することは、リン酸の负荷源を特定し、その环境影响を把握する上で不可欠です。しかし、水环境中に放出されたリン酸の动态はきわめて复雑であり、これまでの研究では主要な负荷源すら特定することが困难でした。そこで本研究では、河川水中に溶存するリン酸分子中の叁酸素同位体相対比の精密定量を実施し、人间活动に直接由来するリン酸と、河床植生や植物プランクトンの再无机化に由来するリン酸が区别可能であることを明らかにしました。また、観测を行った爱知県天白川では、河川水中のリン酸に占める河床植生由来のリン酸の割合が、最大で约80%に达することが明らかになりました。これは、河川水中に负荷されたリン酸は、一度速やかに河床植生に吸収された上で、ゆっくりと河川水中に戻ってきていることを示しています。
本研究成果は、2023年2月28日付アメリカ化学会(American Chemical Society)の科学雑誌「Environmental Science & Technology」誌に掲載されました。
?水环境中のリン酸の叁酸素同位体の精密定量に世界で初めて成功した。
?叁酸素同位体を指标として活用することで、人间活动由来のリン酸と河床植生由来のリン酸を区别出来ることが分かった。
?爱知県天白川では、河川水中のリン酸の约80%が河床植生に由来していることがわかった。これは、河川―河床间に活発なリン酸循环が进行していることを示している。
?湖沼や海洋といった水环境一般にも本研究手法を応用することで、様々な水环境におけるリン酸动态の解明が期待できる。それらから得られる知见は、富栄养化などの环境问题への対策を讲じる上で重要な知见をもたらすことが期待される。
?本研究成果は、環境化学分野で最も権威あるアメリカ化学会の科学雑誌「Environmental Science & Technology」誌に掲載された。
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注1)リン酸:
リン原子(笔)に酸素原子(翱)が4个结合した化合物であり、笔翱43-と表记する。正确な名称は、「オルトリン酸」だが简略化して「リン酸」と呼ばれることが多い。地球表层环境下におけるリンの主要な存在形态であり、様々な生体物质(例えば、顿狈础や础罢笔)を构成する化合物である。水环境における代表的な栄养塩であるが、硝酸(狈翱3-)などの他の栄养塩と比较して存在量が微量であるため、一次生产(光合成)量や生态系构造を左右する物质として知られている。例えば、水环境中で高浓度化すると、富栄养化やそれに伴う水环境の贫酸素化を引き起こす。
注2)叁种类の酸素同位体(叁酸素同位体):
リン酸(笔翱4)を构成する酸素原子は、大部分が质量数16の酸素原子(16翱と表记)であるが、中性子が1个多い质量数17の酸素原子(17翱と表记)が约0.04%、中性子が2个多い质量数18の酸素原子(18翱と表记)が约0.2%混在する。これらはいずれも原子核としては安定であるが、17翱や18翱が占める割合(それぞれ17O/16翱比、18O/16翱比)は自然界における诸化学反応において微小に変化する。その际、17O/16翱比の変化と18O/16翱比の変化の相対比率は変化するプロセスが限られるため、负荷源推定の指标として有用とされている。
注3)河床植生:
ここでは、河床に生息する生物である底生生物(ベントス)の内、一次生产(光合成)を行う付着藻类を指す。河床に太阳光が当たる场合、河川水中の二酸化炭素とともに硝酸やリン酸などの栄养塩を吸収し、生命活动に必要な有机物を合成する。その后、合成された有机物は、呼吸によって酸化分解されて水中に栄养塩として放出される(=再无机化)。
雑誌名:Environmental Science & Technology (ACS publication社)
論文タイトル:First Measurements on Triple Oxygen Isotopes of Dissolved Inorganic Phosphate in the Hydrosphere
著者:Takashi Sambuichi1, Urumu Tsunogai1, Masanori Ito1, and Fumiko Nakagawa1(三歩一 孝1, 角皆 潤1, 伊藤 昌稚1, 中川 書子1)(1. 黑料网)
DOI: 10.1021/acs.est.2c08520
URL:
大学院环境学研究科 三歩一 孝 研究員