国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院环境学研究科の日比野 高士 教授、 ジンチェンコ アナトーリ 准教授らの研究グループは、株式会社SOKENとの共同研究で、廃棄バイオマスの一つであるリグノスルホン酸塩を温和な条件下で電気分解して、陽極でメタノール及び陰極で水素を合成する手法を新たに開発しました。
バイオマスとして注目されるリグニン注7)は木材重量の20-35%を占め、パルプ?製纸工场ではリグノスルホン酸塩として分离されます。しかしリグノスルホン酸の利用法は限られており、カーボンニュートラル注8)に向けた资源循环の観点から、今后はリグノスルホン酸塩を高付加価値化する化学変换法が强く求められます。従来の热?触媒反応ではリグノスルホン酸塩をバニリン注9)、フェノール、バイオオイル注10)、シンガス注11)に変换していましたが、本研究では新発想として酸化剤を电気化学的に阳极で生成し、リグノスルホン酸塩のメトキシ基注12)を攻撃することによってメタノールを高効率で抽出できました。この反応は、燃料や医薬品原料など幅広い用途があるメタノールを产生するだけでなく、低环境负荷な反応条件(75℃?大気圧)のため电源として再生可能エネルギーが活用可能なこと、また代替燃料となる水素を併产することから、バイオマス利用プロセスにおいて二酸化炭素排出量の削减に大きく贡献できると期待されます。
本研究成果は、2023年9月23日付学術雑誌「Applied Catalysis B: Environmental」にオンライン速報版で掲載されました。
?バイオマス注1)廃弃物であるリグノスルホン酸塩注2)から、温和な条件での电気分解により、阳极注3)でメタノール、阴极注4)で水素を高効率に抽出することができた。
?メタノール生成の电流効率注5)は90%以上、収率注6)は40%以上に达した。
?バイオマス利用プロセスにおける二酸化炭素排出量の削减に大きく贡献できることが期待される。
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注1)バイオマス:
生物由来の再生可能资源。植物系バイオマスの场合、二酸化炭素を吸収して育つので、燃やして二酸化炭素を出しても、(プロセス中で外部から人工エネルギーの投与が无ければ)大気中の二酸化炭素浓度に増减がないと考えられている。
注2)リグノスルホン酸塩:
木材などから製纸用パルプを製造する际に、亜硫酸法を用いて分离?単离されたリグニン诱导体(工业リグニン)。本実験ではスルホン酸ナトリウム基(-厂翱3狈补)を官能基として有している市贩の粉末サンプルを使用した。
注3)阳极:
电気分解を行う反応槽で、プラスの电位が掛けられ、酸化反応をもたらす电极。
注4)阴极:
注3の反応槽で、マイナスの电位が掛けられ、还元反応をもたらす电极。
注5)电流効率:
反応槽に流れた电流に対する実际に目的物を得るために使われた电流の比率。
注6)収率:
原料が反応して目的物になる理论量に対する実际に得られた目的物の量の比率。
注7)リグニン:
植物中で多糖であるセルロース、ヘミセルロースと强く结合し存在している。その化学构造は多数のベンゼン环がエーテル结合を介してから复雑につながっている。
注8)カーボンニュートラル:
二酸化炭素の放出量と吸収量が相杀され、二酸化炭素の排出量をゼロと见なすことができる状态。
注9)バニリン:
C8H8O3の化学式をもつ芳香族有机化合物。主な用途はアイスクリームなどのバニラの原料である。
注10)バイオオイル:
バイオマスを小分子化した液体有机化合物群。
注11)シンガス:
バイオマス、石炭、天然ガスなどを高温で主に水蒸気と反応させて得られる水素と一酸化炭素。
注12)メトキシ基:
-OCH3で表される置换基。リグニンには一つのベンゼン环に最大で二つのメトキシ基が官能基として结合している。
雑誌名: Applied Catalysis B: Environmental
論文タイトル: Electrochemical extraction of methanol from lignin under mild conditions
着者: 日比野 高士*, 小林 和代, 周 冬文, 陳 思遠, ジンチェンコ アナトーリ, 寺西 真哉, 宮脇 亜紀, 沢田 義治 (*は责任着者、下线は本学関係者)
DOI: 10.1016/j.apcatb.2023.123328
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