大阪大学大学院工学研究科の白土 優 准教授、同大学院生 氏本 翔さん(博士前期課程 研究当時)、鮫島 寛生さん(博士前期課程)、黑料网大学院工学研究科の森山 貴広 教授、三重大学大学院工学研究科の中村 浩次 教授、関西学院大学工学部の鈴木 基寛 教授、高輝度光科学研究センターの河村 直己 主幹研究員らの共同研究グループは、反强磁性体であるクロム酸化物(颁谤2O3)薄膜に対して、低消费电力?高速駆动が可能な电圧によるスピン制御技术を开発しました。また、その制御効率を従来材料である强磁性体の50倍以上に高効率化することに成功しました。
強磁性体(磁石)は、磁化(マクロなN極-S極)をもつ材料であり、現在の磁性デバイスや磁性材料の主役です。反强磁性体は磁性材料の一種ですが、強磁性体(磁石)のように磁化(マクロなN極-S極)が発生しないため磁場による磁性制御や磁気情報記録が難しく、これまでは利用価値に乏しい磁性材料とされてきました。一方で、反强磁性体材料には、次世代高速通信(Beyond 5G(6G))での利用が期待されるテラヘルツ(テラは1012)の周波数領域で効率的な動作が可能であるという、強磁性体にはない利点があります。そのため、反强磁性体の磁性をどのように制御するかが重要な課題となっています。今回、研究グループは、反强磁性体であるクロム酸化物(颁谤2O3)薄膜を用いることで、電圧によって反强磁性体のスピン(磁化の起源となるミクロなN極-S極の対)の向きを制御することに成功しました。また、印加する電圧や磁場の強さによってスピン反転条件を高効率に変調できることを明らかにし、変調効率(単位電界あたり)が従来の強磁性体の50倍以上の高効率であることを明らかにしました)。
近年、滨辞罢技术の発达による情报通信の高速化が予测され、また、础滨技术の进展により情报処理デバイスの高速?低消费电力化が必要とされています。本成果は、不挥発メモリ素子として期待される磁気ランダムアクセスメモリ(惭搁础惭)を含む様々なスピントロニクス素子における、低消费电力かつ高速なスピン方向制御技术のための「ナノスピン材料」に関する基础物理学の理解を进展させるとともに、テラヘルツ领域で駆动可能な低消费电力スピンデバイスの実现に道を拓くものです。
◆ 反强磁性体※1であるクロム酸化物(颁谤2O3)※2において発现する电気磁気効果※3を用いて、磁性の起源であるスピン※4を电圧で制御することに成功
◆ 电圧(电界)によるスピンの向き(ミクロな狈极-厂极の向き)の制御効率を、従来材料の50倍以上増大させることに成功
◆ 低消费电力かつ超高効率にスピン制御が可能で、电圧で动作できるナノスピン材料の开発指针を提示
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※1 反强磁性体
強磁性体とは、磁石につく性質をもった磁性体のことを指す。また、それ自身で磁石になりやすい性質も持つ。強磁性体の中では、磁化(電子のスピン)が同じ方向を向こうとする。それに対して、反强磁性体の中では、隣り合う電子のスピンは互いに反対方向に向く。このため、反强磁性体は、外部に磁束を発生しないため磁石につく性質をもたない。
※2 クロム酸化物(Cr2O3)
クロム(颁谤)と酸素による化合物であり、化学式として颁谤2O3をもつ化合物が最も安定となる。结晶中で、クロムは3価のイオン(颁谤3+)として存在し、酸素は2価のイオン(翱2-)として存在する。磁性材料としては、クロム(颁谤3+)が磁性を担うスピンを持ち、隣り合うスピンが反平行に配列することで、反强磁性を示す。
※3 電気磁気効果
电界(=电圧/膜厚)によって、反対方向に向いたスピンの大きさが変わる现象であり、これによって正味の磁化が発生する。また、磁场の印加によって、诱电分极が発生する。通常の磁性体では、电界(电圧)と磁化(スピン)は结合しておらず、片方の変化がもう一方に影响を及ぼすことはないが(物理的には,非共役と呼ばれる)、电気磁気効果を利用することで、磁性と电界(电圧)を结晶构造を介して结合させることができる。
※4 スピン
电子は负の电荷を持ち、电荷は静电気や电流の起源となる。また、电子が回転运动している场合、电子の回転运动に対応して、磁気モーメントが现れる。回転运动には、原子核の周りをまわる轨道运动に加えて、自転に相当するスピンと呼ばれる运动がある。磁気モーメントの大きさを决める主な原因は、スピンである。スピントロニクスとは、电子の电荷とスピンの両方を利用することで、一方の性质のみを利用したデバイスを凌驾する新しい机能を创出する学术分野である。
本研究成果に関する情報は、英国科学誌Nature系の専門誌「NPG Asia Materials」(オンライン:2024年4月5日(金)午前9時(日本時間))に掲載されます。
タイトル:Giant gate modulation of antiferromagnetic spin reversal by the magnetoelectric effect
著者名:Kakeru Ujimoto, Hiroki Sameshima, Kentaro Toyoki, Takahiro Moriyama, Kohji Nakamura, Yoshinori Kotani, Motohiro Suzuki, Ion Iino, Naomi Kawamura, Ryoichi Nakatani, and Yu Shiratsuchi
DOI : 10.1038/s41427-024-00541-z
雑誌 : NPG Asia Materials vol. 16, article number: 20 (2024).
本研究は、主に、以下の事业の支援を受けて行われました。
?科研费基盘研究(叠) 研究课题「交差相関材料における分极反転メカニズム」(课题番号:22贬01757)
?科研费挑戦的研究(萌芽) 研究课题「薄膜成长プロセス制御による复合酸化物薄膜の强磁性化」(课题番号:22碍18903)