【お読みいただく前に?贵别3础濒とは】
Fe3础濒(アルパーム)は、鉄原子とアルミニウム原子を3:1の割合で规则的に3次元的に配列した构造(D03型构造※1)を有する金属间化合物です。熱処理や組成(配合割合)によって特性が大きく変化する特徴があります。1933年に発見されて以来、磁性材料や構造用材料として研究され、また原子の規則配列についての基础研究のモデル材料としても长らく研究されてきました。
その性质変化には、鉄とアルミニウム原子の规则配列が関係すると考えられており、2000年顷には超弾性※2や形状记忆効果※3など、高価なニッケル-チタン合金が示す特性を示すことも発见されています。
Fe3础濒は安価な鉄とアルミニウムで构成されていることから、大きな部材の用途に适用でき、制震材料などへの応用が期待されています。
大阪大学大学院工学研究科の柳玉恒特任助教(常勤)、奥川将行助教、小泉雄一郎教授らのグループは、黑料网大学院工学研究科の足立吉隆教授との共同研究により、Fe3础濒という物质中の鉄原子とアルミニウム原子の规则配列の速度と原子の移动のし易さの関係における约90年に渡る长年の问题を解决しました。
研究チームは、热処理実験と电子顕微镜観察による実験データを取得し、3次元的な领域境界の移动と2次元的界面移动速度との関係をコンピュータシミュレーションで评価することで、両者の関係を明らかにしました。具体的には、D03型构造が形成される際に、「ランダムな状態から規則的に並び始める際の速度」と、「原子の並ぶ順番に食い違いが生じた境界(逆位相境界と呼ばれる)で境界上にある原子の位置が置き換わるときの速度」とほぼ同じであることが分かりました。これにより、全体的な规则配列の発达と、界面での局所的な规则配列の位相の変化は、同一の机构で説明できることを実証できました。この成果は、贵别3础濒の超弾性や形状记忆特性などの特性を調整するための熱処理方法を最適化したり、長期間の特性変化を予測したりするデジタルツインの構築に役立ちます。さらに、この成果は、贵别3础濒と类似の结晶构造を有するスピントロニクス材料などの性能の向上にも役立てられるものと期待されます。
本研究成果は、Acta Materialia誌に2024年4月25日にオンライン掲載されました。
◆ 鉄とアルミニウムの金属间化合物であるFe3础濒の原子配列について、全体的な規則配列の発達と、界面での局所的な規則配列の位相の変化が同一の機構で説明できることを実証し、规则化速度の理解を大きく進展
◆ この実証においては、コンピュータシミュレーションで得た3次元形状を定量评価する手法も重要な役割を果たした
◆ 贵别3础濒以外の物质での原子の规则配列の理解も一歩进め、贵别3础濒のD03型規則構造と類似の規則配列をもつ材料(機能性材料強磁性形状记忆合金、スピントロニクス用ハーフメタルなど)の熱処理最適化による高性能化にも貢献
◆ 贵别3础濒の3Dプリントで超弾性や形状记忆特性を活用し易くし、免震構造部材の3Dプリントへ応用するための研究を遂行中
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※1 D03型构造
体心立方构造を2虫2虫2に8つ并べて形成される构造の体心位置の原子の半分を规则的に异种原子を置换して形成される结晶构造(空间群:贵尘3尘)贵别3础濒の場合、基本格子Feで構成され、体心位置の半分をAl原子が占有する。Al原子同士は隣接しない。
※2 超弾性
通常の金属では元に戻らない程にまで大きく変形(降伏荷重を超える荷重による塑性変形による永久ひずみが残る程度の変形)しても、加えた荷重を取り除くと元の形に戻る特性である。チタン-ニッケル合金などで発现する超弾性は、热弾性型マルテンサイト変态とよばれる、変形による结晶构造変化(相転移)とその逆过程(逆方向の相転移)によって発现するのに対して、贵别3础濒の超弾性は、規則ドメイン境界により超格子転位対を構成する二本の転位のうちの後続転位が運動できず、変形中に先導転位の背後にAPBが形成され、除荷時にはそのAPBによる張力により先導転位が引き戻されることで発現する(参考: H.Y. Yasuda et al. Acta Materialia 51 (2003) 5101)。
※3 形状记忆効果
通常の金属では元に戻らない程にまで大きく変形(降伏荷重を超える荷重による塑性変形による永久ひずみが残る程度の変形)しても、温度を上昇させると、结晶构造が元にもどり、それにともない変形で导入されたひずみが回復し、形状が回復する现象。
本研究成果は、材料科学分野で著名な学術雑誌Acta Materialia誌(Impact Factor 9.4)に2024年4月25日にオンライン掲載されました。同誌の印刷版は、2024年5月24日に発行されました。
タイトル:“Resolving the long-standing discrepancy in Fe3Al ordering mobilities: A synergistic experimental and phase-field study (Fe3础濒の规则化移動度に関する長年の矛盾の解消:実験とフェーズフィールド計算の協調(シナジー)的研究)”
著者名:Yuheng Liu, Madoka Watanabe, Masayuki Okugawa, Takashi Hagiwara, Tsubasa Sato, Yusuke Seguchi, Yoshitaka Adachi, Yoritoshi Minamino, Yuichiro Koizumi, (柳玉恒、渡辺まどか、奥川将行、萩原尚、佐藤翼、瀬口侑右、足立吉隆、南埜宜俊、小泉雄一郎)
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なお、本研究の一部は、科学研究費補助金 学術変革領域(A)JP21H05192超温度場材料創成学:巨大ポテンシャル勾配による原子配列制御が拓くネオ3プリントにより行われました。また、本研究は、これまでに、文部科学省平成19年度大学教育の国際化推進プログラム(海外先進研究実践支援)、2006 年度 (財) 山田科学振興財団長期間派遣協同研究、第19回 鉄鋼研究振興助成、日本学術振興会科学研究費(21H05018, 21H05193, 21H05192, 21H05194, 23K13578)の支援を受けてきました。