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数物系科学

2024.09.19

量子物质の光照射によって数兆分の1秒で構造が変化することを発見 ─ 光音響デバイスの新規開拓に期待 ─

光による固体の结晶构造(対称性)の変化は、非接触の超音波トランスデューサー(注3)など光ー力学エネルギーの高速変换の原理として产业応用されることが期待されています。しかし现在の技术は热膨张を介しているため、ナノ(10亿分の1)秒以下の高速、言い换えるとギガ(10亿)ヘルツ以上の高い周波数での応答は困难でした。
東北大学大学院理学研究科の岩井伸一郎教授と天野辰哉助教、黑料网大学院工学研究科の岸田英夫教授、仏レンヌ第一大学物理学科/仏国立科学研究センター(CNRS)のMaciej Lorenc 博士とHerve Cailleau教授、仏ナント大学Jean Rouxel材料研究所/CNRSのEtienne Janod 博士らの国際研究グループは、モット絶縁体(注4)と呼ばれる量子物质のナノ結晶を用いることにより、巨視的な結晶対称性の変化(逆強弾性転移)が、3 ピコ(1兆分の1)秒という、熱膨張を介する場合の100分の1の短時間で完了することを発見しました。こうした高効率、超高速な構造変化は、新規な光音響デバイスの原理として応用が期待できます。
この成果は科学誌Nature Physicsに2024年9月17日にオンライン掲載されました。

 

【ポイント】

● 代表的な量子物质(注1)である酸化バナジウム(滨滨滨)のナノ结晶において、光照射で结晶方位が変化する逆强弾性転移(注2)が、従来の热膨张を介する过程よりも100倍高速に起こることを発见しました。
● 高速な構造変化の機構が、量子物质が示す光诱起絶縁体―金属転移によるひずみ波の伝搬であることを解明しました。

 

◆详细(プレスリリース本文)はこちら

 

【用语説明】

注1. 量子物质:電子の量子多体効果や、幾何学特性が支配する機能性物質(例えば前者は強相関電子系、後者はいわゆるディラック電子系、トポロジカル絶縁体など)は、近年総称して、量子物质と呼ばれている。電子が持つ多自由度(電荷、スピン、軌道)やそれらの間の相互作用を利用した機能も注目されている。本研究の舞台となるモット絶縁体は、量子物质(強相関電子系)の代表物質である。
注2. (逆)强弾性転移:结晶に外部から応力がかかっていない状态において、结晶构造が复数の(準)安定配置(対称性)を持ち、応力によってそれらの构造间で相転移を示すことを强弾性という。例えば、强诱电体碍贬2PO4は、强弾性を示す(対称性の高い构造から低い构造への転移を强弾性転移、逆方向の転移を逆强弾性転移と呼ぶ)。结晶対称性の変化は、しばしば电気分极を変化させるので、强诱电体との関係が议论されることも多いが、(痴2O3のように)必ずしも强诱电性を示すわけではない。
注3. 超音波トランスデューサー:超音波洗浄机や超音波アトマイザーは、电歪材料や磁歪材料(电场や磁场で构造がひずむ物质:ピエゾ素子は电歪物质)を、时间的に振动する电场の周期的な振动で駆动させることを原理としている。こうした物质では、「力学的(机械的)な刺激によって电圧が生じる」という上记の逆过程も起こり、超音波センサーの原理として、このような电磁気学的なエネルギーと力学的なエネルギーを変换する装置を一般的に超音波トランスデユーサー(変换器)と呼んでいる。
注4. モット絶縁体:バンド理论に従えば、単位胞あたりの电子数が奇数个の场合(バンドが部分的にしか电子で満たされていない场合)、结晶は金属である。ところが、一部の迁移金属化合物や有机物では、电子数が奇数であるにもかかわらず、电子间クーロン斥力によるエネルギー损失を避けるために、各原子や分子上に局在する。このような电子相関に起因する絶縁体はモット絶縁体と呼ばれる。モット絶縁体では、クーロン斥力による局在化エネルギーと电子の运动エネルギーが拮抗しているため、バンドの占有数や圧力の印加によって絶縁体から金属へ転移する(モット転移)。

 

【论文情报】

タイトル:Propagation of insulator-to-metal transition driven by photoinduced strain waves in a Mott material(モット物質における光誘起歪波による絶縁体―金属転移の伝搬)
著者:Tatsuya Amano1, Danylo Babich2, Ritwika Mandal3, Julio Guzman-Brambila2,3,8, Alix Volte3,6,8, Elzbieta Trzop3,9, Marina Servol3,9, Ernest Pastor3,9, Maryam Alashoor3, Jorgen Larsson6,7, Andrius Jurgilaitis6, Van-Thai Pham6, David Kroon6, John Carl Ekstrom6, Byungnam Ahn6, Celine Mariette8, Matteo Levantino8, Mickael Kozhaev8, Julien Tranchant2,9, Benoit Corraze2,9, Laurent Cario2,9, Mohammad Dolatabadi2, Vinh Ta Phuoc4,9, Rodolphe Sopracase4, Mathieu Grau4, Hirotake Itoh1,9, Yohei Kawakami1,9, Yuto Nakamura5, Hideo Kishida5, Herve Cailleau3,9,*, Maciej Lorenc3,9*, Shinichiro Iwai1,9*, Etienne Janod2,9*
1 Department of Physics, Tohoku University, Sendai 980-8578, Japan
2 Nantes Universite, CNRS, Institut des Materiaux de Nantes Jean Rouxel, IMN, F-44000 Nantes, France
3 Univ Rennes, CNRS, IPR (Institut de Physique de Rennes) ? UMR 6251, 35000 Rennes, France
4 GREMAN?UMR 7347 CNRS, Universite de Tours, Tours, France
5 Department of Applied Physics, Graduate School of Engineering, 黑料网, Nagoya, Aichi 464-8603, Japan
6 MAX IV Laboratory, Lund University, P.O. Box 118, SE-221 00 Lund, Sweden
7 Department of Physics, Lund University, P.O. Box 118, SE-221 00 Lund, Sweden
8 ESRF, The European Synchrotron, 71 Avenue des Martyrs, CS40220, 38043 Grenoble Cedex 9, France
9 CNRS, Univ Rennes, DYNACOM (Dynamical Control of Materials Laboratory) - IRL2015, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Tokyo 113-0033, Japan
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 教授 岩井伸一郎
掲載誌:Nature Physics
顿翱滨:10.1038/蝉41567-024-02628-4
鲍搁尝:

 

【研究代表者】