国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院工学研究科の原 光生 助教、関 隆広 教授、飯島 雄太 博士前期課程大学院生、立教大学理学部の永野 修作 教授らの研究グループは、プラスチックのように硬く、湿度の変化で 1 億倍も弾性率が変化するシリコーン注 1)素材を开発しました。
直锁状シリコーン注 2)は、一般に室温で流動性を示し、オイルなどの柔軟材料の主成分として利用されています。しかし、本研究にて開発した直锁状シリコーン材料は乾燥状態で合成树脂(レジン)注 3)と同等に硬くなることを初めて见出しました。この机能性シリコーンは吸湿性注 4)を示し、湿潤状態と乾燥状態では弾性率が 1 億倍も変化します。さらに、乾燥状態ではガラスを強く接着させる機能を持ちます。これらの特性は従来の直锁状シリコーンでは実現できないものばかりであり、本研究の成果によって材料の設計指針が広がりました。市販のモノマーを酸と混ぜるだけで簡便に合成できる点も特徴です。モノマーの原料が、豊富に存在するケイ酸塩鉱物注 5)であることからも、厂顿骋蝉 注 6)への贡献も期待できます。
本研究成果は、2021 年 9 月 3 日 18 時(日本時間)付英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究は、文部科学省科学研究费补助金?新学术领域研究(研究领域提案型)「水圏机能材料:环境に调和?応答するマテリアル构筑学の创成」(领域代表:加藤隆史)(闯笔20贬05217)、基盘研究(厂)(闯笔16贬06355)、若手研究(闯笔18碍14283)の支援を受けて行われたものです。
?湿度に応じて弾性率が 1 億倍も変化する機能性の直锁状シリコーン材料を開発。
?&濒诲辩耻辞;乾燥状态ではプラスチックのような硬さ&谤诲辩耻辞;、&濒诲辩耻辞;ラメラ状のナノ注 7)周期構造”、“接着剤の機能発現”という、直锁状シリコーンとして新奇な機能をもつ。
? 広く工業的に表面改質に用いられるシランカップリング剤注 8)をモノマーとして用い、酸と混ぜるだけで简便に合成可能。
?酸の添加量や他のモノマーの添加などで、今后様々な机能化と特性のチューニングが可能。
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注 1)シリコーン:
主鎖がシロキサン結合(Si-O)の繰り返しで構成される有機ケイ素高分子の総称。学術用語ではポリシロキサンという。シロキサン結合の特徴の一つに運動性の高さが図 4. (a)湿潤状態と乾燥状態の引張せん断接着強さ、(b)スライドガラスの間にシリコーンを挟み、6 kg の重りを持ち上げている瞬間の写真。 挙げられ、炭素-炭素結合や炭素-酸素結合を主鎖とする高分子に比べて、シリコーンはやわらかい。他にも、耐熱性や耐候性、気体透過性、消泡性、剥離性、透明性、生体親和性など、シリコーンに特有の性質がある。これらの特性によって、シリコーンは身の回りの様々な柔軟製品の素材となっている。
注 2)直锁状シリコーン:
主鎖が分岐せず、一次元に伸びたシリコーンを指す。直锁状シリコーンは、シリコーン材料の中でも特にやわらかく、室温で流動性を示す。そのため、直锁状シリコーンはオイルやシャンプーなどの主成分として利用されている。一方、化学架橋したシリコーンはエラストマー(シリコーンゴム)として広く利用されている。
注 3)合成树脂:
石油原料から合成される、炭素-炭素结合や炭素-酸素结合を主锁とする高分子の総称で、レジンともいう。
注 4)吸湿性:
自発的に大気中の水分を吸収する现象のこと。水となじみやすい、亲水基やイオン基を含む化合物は吸湿性を示すことが多い。液状になるまで吸湿する性质を潮解性といい、身近な物质として砂糖や塩が挙げられる。
注 5)ケイ酸塩鉱物:
二酸化ケイ素(厂颈翱2)と金属酸化物の塩からなる鉱物の総称で、シランカップリング剤製造の原料になる。地上に豊富に存在する。
注 6)SDGs:
国連総会で採択された 17 個の持続可能な開発目標の略称。
注 7)ナノ:
ミリやキロ、メガのような、接頭辞の一つ。1 ナノメートルは 10-9 メートルに相当する。ナノメートルサイズで繰り返される規則的な構造をナノ周期構造という。
注 8)シランカップリング剤:
ケイ素(厂颈)に一つ以上のアルコキシ基あるいはハロゲンが付いた化合物の総称。シリカ粒子の合成原料に用いられる他、表面改质剤やバインダーなどの用途でも用いられる。
雑誌名:Scientific Reports(2021 年 9 月 3 日付けの電子版)
論文タイトル:Simple Linear Ionic Polysiloxane Showing Unexpected Nanostructure and Mechanical Properties
著者:原 光生(名大院工?助教)、飯島 雄太(名大院工修了生)、永野 修作(立教大理?教授)、関 隆広(名大院工?教授)
DOI: 10.1038/s41598-021-97204-8
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