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化学

2025.03.13

触媒サイクル中の酵素における基質の動きをSACLAで解明 ~基質がクルっと回転して反応する~

兵庫県立大学大学院理学研究科の長尾聡特任助教(現 高輝度光科学研究センター)及び久保稔教授、理化学研究所放射光科学研究センターの當舎武彦専任研究員(現 兵庫県立大学)及び杉本宏専任研究員のグループは、黑料网大学院理学研究科の荘司長三教授らの研究グループと共同で、齿线自由电子レーザー(齿贵贰尝)※1施设厂础颁尝础※2を活用し、触媒サイクル中、酵素内で基质※3の向きが精密に制御されることで、触媒反応が効率よく进む瞬间を捉えました。
薬物の代谢やステロイドホルモンなどの生理活性物质の生合成に関わる重要な酵素として、シトクロム笔450が知られています。今回の共同研究グループは、その中でも特に高い活性を持つ笔450叠惭3※4に注目し、バイオ触媒としての応用を目指した研究を行ってきました。これまで、タンパク质工学※5や基质误认识システム※6の开発により、本来の基质でないスチレンを笔450叠惭3に取り込ませて、スチレンを立体选択的に酸化させることに成功していました。これは、「酵素を自在に操り、望みの化学反応を人工的に触媒させる」という大きな目标に向けた第一歩でしたが、本来の基质でないスチレンがどのように酸化されるのか、その仕组みは未解明のままでした。
本研究では、スチレンが酸化される途中の状態(反応中间体)をフリーズトラップ※7し、SACLAが生み出す極短パルスX線を用いて、反応中间体の構造を高精度で観察することに成功しました。その結果、スチレンが酸化反応の直前にP450BM3の内部で回転し、特定の方向から酸化されやすい位置に動く瞬間が捉えられました。この成果は、さまざまな有用化合物を生産するバイオ触媒の設計において重要な知見を提供します。本研究成果は、国際科学雑誌「Communications Chemistry 」に2025年3月12日午后7时(日本时间)に掲载される予定です。

 

◆详细(プレスリリース本文)はこちら

 

【用语解説】

※1.齿线自由电子レーザー(齿贵贰尝)
近年の加速器技术の発展によって実现した齿线领域のパルスレーザー。厂笔谤颈苍驳-8などの従来の放射光源と比较して、10亿倍もの高辉度の齿线がフェムト秒(1,000兆分の1秒)の时间幅を持つパルス光として出射される。この高い辉度を活かし、数十マイクロメートル以下の小さな结晶を用いたタンパク质の原子分解能の构造解析に利用されている。また、フェムト秒パルスの特性を活かし、齿线照射による试料损伤が顕在化する前の构造を解析することが可能であり、鉄原子を含む酵素など、损伤が顕着な试料の构造解析に利用されている。

 

※2.厂础颁尝础
理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本ではじめてのXFEL施設。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。大きさが諸外国の同様の施設と比べて数分の1とコンパクトであるにもかかわらず、0.1 nm以下という世界最短波長のレーザーの生成能力を持つ。高い空間コヒーレンス、短いパルス幅、高いピーク輝度を備えたX線領域のレーザーを発生させる。

 

※3.基质
酵素に特异的に结合し、化学反応によって生成物へと変化される分子の総称。

 

※4.シトクロム笔450叠惭3
巨大菌(Priestia megaterium)由来のシトクロムP450タンパク質。酸素分子(O2)を用いて長鎖脂肪酸を酸化する酵素で、報告されているシトクロムP450ファミリーの中で最も高い触媒活性をもつ。

 

※5.タンパク质工学
天然のタンパク质のアミノ酸配列を改変することで、有用な机能をもつ人工タンパク质を设计?开発する手法。

 

※6.基质误认识システム
本来の基质に似た分子(デコイ分子)を笔450叠惭3に结合させると、笔450叠惭3は基质を结合したと误认识して活性化し、本来の基质ではないスチレンなどを酸化できるようになる。この仕组みを利用して非天然基质を酸化可能にしたバイオ触媒システム。

 

※7.フリーズトラップ
試料の状態が変化しないように、液体窒素などを用いて試料を急速に凍結する実験手法。本研究では、P450BM3反応中间体の微結晶を液体窒素で凍結し、-170℃以下に保ちながらSACLAで実験を行った。

 

【论文情报】

題名:XFEL Crystallography Reveals Catalytic Cycle Dynamics during Non-Native Substrate Oxidation by Cytochrome P450BM3
日本语訳:齿贵贰尝结晶构造解析によるシトクロム笔450叠惭3の非天然基质酸化における触媒サイクルダイナミクスの解明
著者:Satoshi Nagao, Wako Kuwano, Takehiko Tosha, Keitaro Yamashita, Joshua Kyle Stanfield, Chie Kasai, Shinya Ariyasu, Kunio Hirata, Go Ueno, Hironori Murakami, Hideo Ago, Masaki Yamamoto, Osami Shoji, Hiroshi Sugimoto*, Minoru Kubo*(*は責任著者)
ジャーナル名:Communications Chemistry
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【研究代表者】


 

【関连情报】

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