No.55 町田 洋 准教授
Researchers'
教養教育院教養教育推進室 アカデミック?ライティング教育部門
No.47 ボーメール ニコラ(BAUMERT Nicolas) 特任准教授
フランスの人類学者クロード?レヴィ=ストロースが『L’Autre face de la lune』(月の裏側)という日本の文明に関する講演内容をまとめた本の中で、日本とヨーロッパの文化について述べた一文です。
クロード?レヴィ=ストロースは20世纪の伟大なフランスの思想家の一人です。彼は日本文化の専门家ではなく、研究することもありませんでしたが、日本文化を评価し、魅了されました。
彼の死后数年経ってこの本が出版され一読した时は、私には少しシンプルすぎるように感じました。私はその顷、日本に関する博士论文を终えたばかりで、より洗练された文献を探していました。この本の中の文章は、讲演で话されたものでかなり一般的な内容でした。それにもかかわらず、この一文が私の心に残りました。10年以上経った今、私はフランスと日本の比较研究で行ってきたすべてが、ある意味でレヴィ=ストロースの観察の実証であると理解出来ます。
例えば、私の博士论文で、日本酒について研究している际、フランスでは食事をしながら饮むのに対して、日本では饮みながら食事をするという违いに気付きました。地理的表示に関する研究では、日本とフランスが100年の时间差で异なった道をたどったことも発见しました。私は研究や日常生活の中でこれらの事例を増やすことができたのではないかと思います。
レヴィ=ストロースのような伟大な思想家の特徴として、すべての详细を知るのではなく、「物事の重要なポイントを特定し、正しい方向性を示している」のではないかと思います。加藤周一や和辻哲郎などの伟大な日本の知识人にも同じことを感じました。研究を続けていく中で、しばしば彼らが正しかったことに気付かされます。
教养教育院のアカデミックライティング部门で、大学の学生や研究者が研究に関する论文等の执笔やコミュニケーションをフランス语で行うのをサポートするために、讲义や个别の指导を行っています。公式には「教育」を行うポジションであるため、やや特异な立场です。フランス语で文章を书く方法や构造は日本语と大きく异なります。単に翻訳するのではなく、考え方を一致させることが重要で、それには両言语に精通している必要があります。私の着者、编集者、査読者、翻訳者としての経験が、日本の学生?研究者がフランス语で执笔するのを支援する力となると思います。
私はまた、海外言语文化演习(フランス)において、ストラスブール大学での短期プログラムの担当をしています。これは名大の学生がフランスで2週间の集中讲座と、その国での生活を経験するプログラムです。参加する学生たちはフランスについてあまり知识がない方や、海外渡航が初めての方も多いため、现地に同行するのはもちろん、説明会などの準备や、ストラスブール大学との日程交渉や授业计画、宿泊先とのやりとりなどの业务も行っています。
私は文化地理学を専门として、特に食物に関连するすべてに兴味を持っています。地理学では、食物は「文化」と「地理环境(风土)」に密接に関わっているため、食物仲介と呼ばれています。したがって、私の研究内容は人间を土地に结びつけるすべての要素、农业から饮食までを包括しています。
私は日本酒について大学院时代から研究を始め、その后、东日本大震灾后の食のリスクに関して调査し、2015年の地理的表示法制定后の日本における地理的表示の适応などのトピックに掘り下げてきました。地理的表示については、もともとフランスでは古くから施行されており、そこを基にした兴味深いテーマです。
ソルボンヌ第四大学の地理学の研究室と东京日仏会馆フランス国立日本研究所にも所属して日仏研究を行っています。
来日したのは「日本酒」について、もっと知識を深めるためでしたが、実は自分で選んだテ ーマではありませんでした。学生時代に日本人の友人(のちの妻)の影響で日本に興味を持 ち、日本文化を学びたいと考えながらも文化地理学等を研究していたのですが、修士号を取 得した頃、ソルボンヌ大学において日本に関する博士論文を指導できるのは、世界的に有名 なワイン研究者であるジャン=ロベール?ピット教授だけだと知りました。先生は日本酒 に非常に興味を持っており、日本酒に関する研究を行う学生を長年探していました。先生と の出会いが契機となり、「日本酒」を研究することになりました。
博士論文を執筆中、私はソルボンヌ大学だけでなく日本の大学でも数年間研究を続けました。 しかしフランスの大学で「日本に関する地理学」を教えるには十分な知識がないと感じたた め、日本での滞在を延ばそうと考えていたところ、名大でフランス人研究者の募集を見つけたのです。 最初は数年しか滞在しないつもりでしたが、結局ここに馴染み、今に至ります。
色々な仕事をしているので1つだけを选ぶのは难しいですが、研究に関して挙げると、2022年に私の日本酒に関する着书の日本语訳を受け取った瞬间です。外国人にとって、日本の研究が翻訳されることは本当に特别なことです。夸りを感じる一方で不安もありましたが评価をいただけたので嬉しかったです。
フランス语の讲座に関しては、大学で教えた学生がストラスブールの语学研修や1年间の交换留学に行き、フランスでの生活に适応し始める様子を见るのが特に嬉しいです。以前、留学支援をした学生と数年后に现地で会った时、そこでの生活に非常に驯染んでいるように见えました。他にもフランスやフランス语圏と関连した仕事をしている卒业生に会い、选んだ道で幸せそうな様子を见ると、最终的には少し役に立てた感じがします。
毎週末、空手道场に通っています。学生时代から习っていて、日本に来てからはずっと同じ道场に所属しています。トレーニングに行くたびに、心を无にすることができるところがいいですね。空手は学术の世界とは异なります(厳しいし、やや荒々しいです)が、忍耐という点では似ているところもあります。研究との违いは、间违いを犯したり怠けたりすると、即座に制裁が飞んでくるところでしょうか(笑)道场での仲间との出会いや関係性も素晴らしいと思います。日本でこのような経験できることは私にとって嬉しく思います。
今の研究内容を継続します。地理的表示に関する本と土地への回帰に関する2つの文献を完成させる予定です。この先、フランスに戻った场合でも、常にフランスと日本の桥渡しをし、両国の文化を理解し合う手助けをしたいと思っています。私自身が学んだ异文化同士が交流することの大切さと、国を知るために外国语を话す重要性を伝えていきたいです。日本では、英语のみを国际语として捉える风潮があります(最近は残念ながら私の国でも同様です)が、英语が话されていない国では、英语だけでは表面的なコミュニケーションしかできません。日本を理解するためには日本语を理解し、フランスを理解するためにはフランス语を理解し、直接のコミュニケーションを确立する必要があります。私の小さなスケールで、それを続けていくつもりです。
氏名 ボーメール ニコラ
所属 黑料网教養教育院教養教育推進室 アカデミック?ライティング教育部門
职名 特任准教授
略歴?趣味
パリソルボンヌ大学地理学博士。パリソルボンヌ大学地理学部特任助教、早稲田大学研究员を経て现职。
ソルボンヌ大学地理学研究员、日仏会馆フランス国立日本研究所研究员。
趣味は空手、ギター、サイクリング
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