No.55 町田 洋 准教授
Researchers'
糖锁生命コア研究所
No.41 佐藤 ちひろ 教授
科学の世界は、セレンディピティ(思いがけない素敌な偶然に出会ったり、予想外のものを発见したりすること)に満ちています。
自分が考えた仮説に沿って研究していても、その仮説がいとも简単に覆されることは日常茶饭事です。しかし、仮説が否定されたとしても、自分の想像し得なかった事実を発见したとき、本当にワクワクします。
一方、きっちり见えているものや予想できること、すなわち「必然」は确実に存在します。明确な事象を积み上げ、因果関係を突き詰めていくことは研究の大半を占める作业です。このような必然と偶然に向き合う研究者の仕事を言い表している気がして、この言叶を选びました。
私たち生物の细胞を覆う「糖锁」について研究しています。糖锁は细胞间の接着や情报伝达に深く関わることが知られていますが、これまでの研究を通じ、脳に偏在し、记忆や学习、社会性行动に深くかかわる糖锁の一つである「ポリシアル酸」の新しい机能を発见しました。
私は大学时代の研究室でたまたま糖锁の研究に携わったのを机に、ここまで糖锁の研究を続けてきました。当初は糖锁の构造を解析する研究に携わり、続いて糖锁の新规検出方法について研究を进めてきました。そして近年は、糖锁の机能や働きを解明し、人々の生命活动に寄与する社会実装に向けた研究にかかわるようになりました。
现在、ポリシアル酸が统合失调症、双极性障害をはじめとする精神疾患にも関わる可能性を提唱するとともに、どのようなメカニズムで作用しているのかを、特に糖锁构造に着目して解析しています。また、精神疾患のほか、癌、アルツハイマー病などの诊断や治疗につながる创薬を目指した応用研究を行っています。
幼いころから自然科学が好きでした。岛根県松江市出身なのですが、よく钓り好きの父に连れられて日本海に出かけて、岛根半岛の海岸を眺めて感动したのを覚えています。特に、魅了されたのはその「地形」でした。リアス式海岸特有の岩场、断层や褶曲(しゅうきょく)した地形、そうした自然の构造を见て、地球の力强さや壮大さに思いをはせていました。今思うと、ヘンな子どもですね(笑)
学校では勉强するのが楽しかったです。中でも科学は、物事を论理的に説明できる手段として好きでした。中学生のころから漠然と「ずっと勉强していたいな~」と考えていて、高校の理数系に进み、东大の理学部に入学し、そのまま研究の道に进んで今に至ります。
研究を进めていて自分が想像した通りの结果が得られたとして、それは喜ばしいけれど、决して感动することはないと思います。糖锁に着目をしていますが、糖锁を见ているだけですべてが解明できるわけではありません。见えているものではなく、见えていない别のものが突然见えることがあります。未知なるものに包まれていて、それが明らかになった瞬间のドキドキ、ワクワク感。こうした感动を味わえるのが、研究の面白さであり魅力だと思います。
もともと、好きなものや好きなことに対するこだわりが強いのだと思います。理学部出身の典型だと思うのですが、単に「研究が好き」で真理の追究をひっそりと続けてきたのが正直なところで、はじめから「社会に役立とう」という大それた意気込みなどはありませんでした (笑)。
たまたま入った研究室で糖鎖と出会い、好きで、でも必死にコツコツ続けてきたことが、今は偶然の重なりによって人や社会の役に立とうとしています。「こんな変わり者でも研究者として、社会の一員としてやっていけるんだ??」と少しだけ心にとめて、若い学生の皆さんが安心して将来歩んでくれたらうれしいです。私自身、典型的な会社勤めができるとは想像できないので…、研究者になったのは必然だったのかもしれませんが (笑)。
氏名(ふりがな) 佐藤 ちひろ(さとう ちひろ)
所属 糖锁生命コア研究所 統合生命医科学糖鎖研究センター(専任)
黑料网大学院生命农学研究科(兼任)
生物机能开発利用研究センター(兼任)
职名 教授(统合生命医科学糖锁研究センター长)
略歴?趣味
東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士?博士課程修了、博士(理学)取得。黑料网 糖锁生命コア研究所 統合生命医科学糖鎖研究センター センター長。黑料网大学院生命农学研究科(応用生命科学専攻)教授。趣味はポリシアル酸研究、美術鑑賞、地形と歴史を見るドライブ、四方山話。
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?黑料网研究成果発信サイト(2019/1/22)「やる気」の回復を促す脳内分子を発见~ポリシアル酸は海马のセロトニンシグナル伝达を増强する~