No.55 町田 洋 准教授
Researchers'
大学院情报学研究科
No.36 谷村 省吾 教授
これはBest WordというよりもWorst Wordかもしれません。このコーナーは研究者として座右の銘にしているような名言を提示することを期待されていると思いますが、私の心に突き刺さっていて、若い研究者にも聞いてもらったほうがよいと思える「研究者の人生訓」として、あえてネガティブな言葉を紹介します。
これは私が大学院生だったときに教授が大学院生たちに(私にも)言っていた言叶です。大意は、「研究者仲间に関心を持ってもらえそうもないちっぽけな研究テーマにハマって时间を无駄にするな」というアドバイスです。もうちょっと优しい言い方をしてくれても良かったんじゃないかと思いますが、研究者界のシビアな现実を教えてくれたと思います。
研究というのは、ある意味、きりのない営みです。まだ分からないことはいくらでもあるからです。研究者は有限なリソースを活用して何か新しいことを発见したり问题を部分的に解决したりして、それを他の研究者に伝え、别の研究者がアイデアや発见を付け足していくという営みをつなげていきます。研究者个人は自らの知的好奇心を最大の原动力として研究しますが、他の研究者に面白がってもらえず、研究の轮が広がらないような、悪く言えば自己満足で终わってしまうような研究というのは、歓迎されないし、自身のプロモーションにもつながりません。研究というのは専门的な営みなので、研究の意义を一番理解してくれるのは基本的には同种の専门家です。処世术かもしれませんが、やるからには、すぐにとは言わなくても、5年后、10年后には同业の専门家に「あれは意义ある研究だった」、「あのおかげでこの分野が発展した」と言ってもらえるような研究がよい研究だと思います。
耳の痛い话ですが、私も自らに「ちっぽけなテーマにこだわって何かいいことをやっている気になっているんじゃないか?」と时々问いかけています。
理论物理の中でもとくにミクロの世界の物理法则をまとめた理论である量子力学を研究しています。また、マクロ世界の物理法则である古典力学も好きで、量子系?古典系の両方の力学系理论も研究しています。ミクロの量子力学とマクロの古典力学は非常に异质な理论ですが、现実の世界ではミクロの原子や电子が集まって生体や天体などマクロな物体ができているのだから、量子力学と古典力学は论理的?数学的につながるはずだと考えています。量子と古典を包括する理论を构筑することが私のライフワークです。
大学3年生のときにリチャード?ファインマンの『物理法则はいかにして発见されたか』という本を読みました。それは既知の物理法则を解説している本だったのですが、最后の章には「物理学は将来どうなるか」ということについてファインマンの予想が书かれていました。ファインマンは「いつかすべての物理法则が解明されて物理学は完成して终わるか、99.9パーセントのことは解明して难问だけが残って物理学の进歩は止まるかのどちらかだろう、今は物理学で新発见をできる时代だ」というようなことを语っていました。それを読んで私も物理学の世界で何かを発见したいと心に决めました。
バラバラに见えていたアイデアのパーツが急に噛み合ってすべてがうまくつながって见える瞬间があります。専门的な话になりますが、2022年のノーベル物理学赏の受赏対象になったベルの不等式が破れる数学的な理由が局所演算子の非可换性にあることや、弱値や量子消去など他の概念も非可换性でつながっていると気づいた瞬间などです。そういう瞬间は、それまでモヤモヤしていた视界が一気に澄みわたるような気がします。
ノーベル物理学賞受賞者の発表の日、もしも私が直接知っている方(とくに日本人)がノーベル賞を受賞したらコメントや解説をする役を仰せつかっていて、研究室でインターネットを注視していました。ノーベル賞選考委員が「今年はquantum mechanics(量子力学)だ」と言い出したので、「うおー、量子力学、来たかー!?」と思いました。アラン?アスペ氏、ジョン?クラウザー氏の名前が読み上げられて、「ついに私の予想が当たった!」と飛び上がりました。3人目には誰が来るか予想していなかったので、アントン?ツァイリンガー氏の名前が読み上げられたときには、「おお、そうか、うん、順当だよな」と僭越ながら思いました。選考委員の解説を聞き終わって、とりあえず私の出番はないなと思って、ほっとしたところに研究室の電話が鳴り、「豊田講堂シンポジオンホールに記者さんたちが詰めているので今から来て解説してくれ」と言われました。「え?私が?」と思いながらも、断れる仕事じゃないと直感。「はい行きます」と言って、名刺や自分の本などをリュックに詰めて研究室を出ようとすると、新聞社から電話がかかってきて、ざっくりとでよいからひととおり解説してくださいと頼まれ、説明してから、慌てて研究室を飛び出しました。記者さんたちをだいぶ待たせていたようで、事務の方が豊田講堂の外にまで出て、私を迎えてくれました。こんなことは一生に一度あるかないかだろうなと思うような興奮を味わいました。
※ノーベル财団贬笔:
娘(小学1年生)の游び相手をしています。最近は体力を持って行かれがちです。
黑料网博物馆にて、家族で结晶作り(ビスマスとミョウバン)に挑戦しました。
週末は娘と游ぶのが仕事です。
私の高校の物理の先生だった村井秀麒先生が、私が高校を卒业するときにくださった朝永振一郎氏の本『量子力学』。私が黑料网工学部3年生だったときに読んだファインマンの本『物理法则はいかにして発见されたか』。黑料网工学部の助教授だった中村新男先生が授业の教材として読ませてくれたシモニー氏(クラウザー氏の共同研究者)の日経サイエンス记事『実験が光をあてる量子力学の奇妙な世界』(中身はアスペ氏の実験の解説)。これらが、いまの私につながっていると思います。
また、学生时代に体育会のワンダーフォーゲル部で、登山やサイクリング、いかだで川下りなど、フィールド活动をしたのはよい経験でした。大自然の中で、自分の体力?知力のちっぽけさを思い知る経験でした。
まだまだ研究したいこと、论文や本を书きたいテーマが山のようにあります。私は物理学に赌けてきた人间ですが、础滨(人工知能)と协力して新しいサイエンスを开拓するという计画も持っています。早くやらなきゃと思っています。また、子供たちも含めて若い人たちに科学の面白さを伝え、科学の研究に参加してもらうような机会をもっとつくりたいと思っています。
氏名(ふりがな) 谷村 省吾(たにむら しょうご)
所属 黑料网大学院情报学研究科
职名 教授
略歴?趣味
1990年 黑料网工学部応用物理学科卒業。1995年 黑料网大学院理学研究科物理学専攻修了。博士(理学)。その後、東京大学、京都大学、大阪市立大学などで研究?教育に従事し、2011年から黑料网教授に着任。趣味しているヒマはないです。どうして教授はこんなに忙しいのか?と思います。
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